厚生労働省は2021年9月、新型コロナウイルス感染症に関する医療用の抗原検査キットを薬局で販売することを認めた。これは特例的に認めたものとされる。しかし、抗原検査キットは、これまでもネットなどで販売されていた。なぜ特例なのか。
今回のポイントは、厚労省が「医療用」の抗原検査キットの販売を認めたということだ。これまで一般的に販売されていた検査キットは「研究用」という位置付けになっている。「医療用」と「研究用」の違いは、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく承認を国から受けているかどうかだ。「医療用」として承認を受けている検査キットは、性能などが国から認められている。もちろん、研究用であっても検査性能がないわけではない。しかし性能の担保がなく、中には粗悪なものがあるかもしれない。
承認を受けている検査キットは「体外診断用医薬品」に分類され、診断などに用いることを目的としている。一方、研究用のものは診断目的とすることはできない。診断目的で利用可能と標榜することはもちろん、新型コロナウイルス感染症にかかっているかどうかを確認できるなどと広告やパッケージに表示することもできない。
研究用にもかかわらず診断の際に利用できるような標榜をしてしまえば、未承認医薬品の広告や販売とみなされ薬機法に反する。厚労省も研究用の抗原検査キットは新型コロナウイルス感染症にかかっているかどうかを調べる目的で使用すべきでないと注意喚起している。研究用にもかかわらず、厚労省から承認などを受けていると誤認される表記をしたとして、消費者庁が企業に行政指導した例もある。研究用の検査キットのパッケージや広告の文言には十分に注意する必要がある。
もっとも、医療用の抗原検査キットの販売は可能となったが、そのキットの結果だけをもって新型コロナウイルス感染症の確定診断ができるわけではない。体調が気になる場合のセルフチェックに用いることが想定されている。そのため購入者には陰性の場合でも「偽陰性」の可能性があることを考慮することが求められている。
具体的には、症状がある場合は医療機関を受診することなどに同意してから利用することとしている。なお、医療用の抗原検査キットは特例であっても薬局でしか販売はできない。また、対面での指導を要するためインターネットでの販売も不可となる。