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 医療機関や薬局と提携して医療に関連するサービスを展開する事業者は、自身が医療や医薬品の提供をしないように気を付けているだろう。これは、「医師法」や「医療法」「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」「薬剤師法」などに触れぬようにしているためだ。

クリニック紹介サイトなどのサービス展開で注意したいのが健康保険法に基づく療担規則と薬担規則である
クリニック紹介サイトなどのサービス展開で注意したいのが健康保険法に基づく療担規則と薬担規則である
(出所:123RF)
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 しかし、せっかく医師法などの法令を順守してサービスを検討していたにもかかわらず、あとで思わぬ壁にぶつかることがある。それは、「健康保険法」やそれに基づく省令の「保険医療機関及び保険医療養担当規則」と「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」だ。これらは、療担規則や薬担規則などと呼ばれることもある。

 病院や薬局を開設するには、医療法や薬機法に基づく許可を受ける必要があるが、保険診療を行うためには、さらに健康保険法に基づく保険指定を受けなければならない。我が国は国民皆保険制度があるため、ほとんどの医療機関や薬局はこの指定を受けている。指定を受けた保険医療機関や保険薬局は、療担規則や薬担規則などに従った運用が求められるのだ。

 それでは療担規則や薬担規則がどのようにサービス事業者に影響するのか。事業者が一般人向けに何らかのアプリサービスを展開し、そこで医療機関を宣伝するケースを考えたい。法令やガイドラインを順守していれば、医療機関の広告を掲載すること自体は可能だ。

 しかし注意したいのは、事業者が医療機関へ患者を誘導した場合に、医療機関から患者紹介料を得ることだ。例えば事業者がクリニック紹介サイトなどのサービスを運用し、患者を紹介するたびに医療機関から紹介料を得るような事業である。実は、保険医療機関に患者を紹介しようとすると療担規則に触れてしまう。

 療担規則では、保険医療機関が紹介会社に紹介料などを支払うことによって、自身の保険医療機関で患者が診療を受けるように誘引することを禁止しているのだ。保険薬局に対しても薬担規則の中で同様の規定がある。