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 NTTドコモは2022年7月1日、営業開始30年の節目を迎える。同時にこの日、ドコモはグループ内の法人事業やコンシューマー事業を機能別に統合する再編の第2弾を実施し、新生NTTドコモグループとして本格的な再スタートを切る。

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTコムウェアを子会社化したことで、NTTドコモは売上高6兆円企業へと生まれ変わった。しかしこの30年間で約6割あった携帯電話の契約数シェアは約4割まで落ち込み、法人事業など今後の屋台骨となる分野は、他社と比べて成長率が後れを取る。再編という大ナタによって転機を迎えた新生NTTドコモグループは、再び輝きを取り戻すことができるのか。

「武将」が「ゆでガエル」のマインド変える

 「危機感がないんじゃないか、という感覚だった。なんでドコモはやらないのか、という取り組みがこれまで多かった」

「武将」のように社内を鼓舞する、NTTドコモの井伊基之社長
「武将」のように社内を鼓舞する、NTTドコモの井伊基之社長
(写真:加藤 康)
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 新生NTTドコモグループを率いる井伊基之社長は、1年半前の社長就任当時の状況をこう振り返る。

 当時のドコモは典型的な「ゆでガエル状態」(NTTグループ幹部)にあったという。MNP(モバイル番号ポータビリティー)による転出超過が10年以上続き、顧客流出が止まらないにもかかわらず、「モバイル事業は規模が大きく、それなりの収益、利益を上げられるため切羽詰まった危機感がなかった」(井伊社長)。

この30年間でドコモの携帯電話の契約数シェアは60.0%から43.4%に低下した
この30年間でドコモの携帯電話の契約数シェアは60.0%から43.4%に低下した
(出所:電気通信事業者協会のデータを基に日経クロステック作成)
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 当時、営業利益ではKDDIとソフトバンクの後塵(こうじん)を拝し、「業界3位」へと転落していた。にもかかわらず「なんとかなる」という空気が社内にまん延し、有効な対抗策などを打ち出せていなかった。

 井伊社長はそんなドコモ社員のマインドを戦うモードへと変えるべく、就任後に社内を鼓舞してきた。

 「これまでのドコモは、本来やれるのに、やらないという取り組みが多かった。だから、ためらっていることをリーダーが先にやる、と決めることだ。ここでチェンジしないと取り残されてしまう」(井伊社長)

 オンライン専用プランの「ahamo」や、家庭向けの5G(第5世代移動通信システム)サービスである「home 5G」は、そんなトップダウンの成果である。ahamoはドコモのモメンタム(勢い)回復の一手となり、実に12年ぶりのMNP転入超過をもたらした。強力なリーダーシップで社内風土を変えようとする井伊社長の姿は、さながら「武将」のようだ。

 もっともドコモ社内からは、矢継ぎ早の変革に対し、反発する声も漏れ聞こえてくる。

 「井伊社長は(MNPのポートインばかりを重視する)MNPマンだ」「いい(井伊)社長ではなく、悪い社長だ」

 だが井伊社長は意に介さない。「人間はこれまでのやり方を変えることに不安なものだ。最初は反発もしょうがない。しかし、やり始めるとそのうち、加速し始めるのがドコモグループだ」と続ける。

 足元では、そんな改革に向けた思いが社内に浸透してきたという。「社員は自由にやっていいということを理解し始めている」(井伊社長)。

 特に力を入れるのが、20~30代に受け入れられるサービスの開発だ。「20~30代の社員には、自分たちが欲しいサービスを考えてくれ、と言っている。この世代に子供ができ、その子供たちが他キャリアを使うようになってしまうと、ドコモの将来は終わってしまう。だから若者を味方につけることが重要だ」と、井伊社長は力を込める。

期待がかかる法人事業、成長率は他社に後れ

 新生NTTドコモグループは、従来の携帯電話サービスを主軸とした「コンシューマ通信事業」、金融・決済やコンテンツなど非通信分野である「スマートライフ事業」、そして法人ビジネスである「法人事業」の3つのセグメントを柱に掲げる。

 料金引き下げによる影響が大きいコンシューマ通信事業の減収減益を、スマートライフ事業と法人事業の2つの成長領域でカバーし、増収増益を目指すというのが2022年度の新生NTTドコモグループの戦略である。

NTTドコモのセグメント別売上高予想。コンシューマ通信事業の減収分を法人事業とスマートライフ事業で補う。セグメント間の調整があるため、各事業の合算は合計値と一致しない
NTTドコモのセグメント別売上高予想。コンシューマ通信事業の減収分を法人事業とスマートライフ事業で補う。セグメント間の調整があるため、各事業の合算は合計値と一致しない
(出所:NTTドコモの決算資料を基に日経クロステック作成)
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NTTドコモのセグメント別営業利益予想
NTTドコモのセグメント別営業利益予想
(出所:NTTドコモの決算資料を基に日経クロステック作成)
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 新生NTTドコモグループとして反転攻勢を目指すに当たり、大きな期待がかかるのが、NTTコムの統合で一気に規模を拡大した法人事業だ。

「競合他社と伍(ご)す成長率にならないと意味がない」と語るNTTコムの丸岡亨社長
「競合他社と伍(ご)す成長率にならないと意味がない」と語るNTTコムの丸岡亨社長
(写真:陶山 勉)
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 法人事業の責任を負う、NTTコムの丸岡亨社長は「ドコモの法人事業と一緒になることで、これまで大企業や東名阪中心という点的だったNTTコムのビジネスが、中小企業や全国の地域を含めて面的にアプローチできるようになる。質的に変化する点が一番のメリットだ」と意気込む。

 2021年10月に打ち出した新生NTTドコモグループの中期経営目標でも、法人事業は大きな成長をコミットした。2025年度の法人事業売上高は2兆円以上と、2020年度の1.6兆円から4000億円増やす目標だ。CAGR(年平均成長率)でみると法人事業には4.6%の成長が求められる。