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 「ようこそNTTコミュニケーションズグループへ。お互いを知り、リスペクトし合い、みんなで世界を変えていきましょう」

 2022年7月1日に新体制へ移行した新生NTTドコモグループはこの日、法人事業をNTTコミュニケーションズ(コム)グループに集約するという再編のステップ2を実施した。NTTドコモで法人事業を担当してきた社員は、新たにNTTコムグループに加わった。

 冒頭のメッセージは、NTTコムグループに新たに加わったNTTドコモ社員に対する、NTTコムの丸岡亨社長からの贈り物だ。仕事をする上で必要なノートパソコンや社章、名刺などをまとめた「ウェルカムパッケージ」に、写真入りのメッセージを添えた。いち早くNTTコムグループに溶け込んでもらおうという心配りである。

ドコモから新たに移ってきた社員に配られた「ウェルカムパッケージ」
ドコモから新たに移ってきた社員に配られた「ウェルカムパッケージ」
(出所:NTTコミュニケーションズ)

 新生NTTドコモグループの中でも、法人事業を担うNTTコムグループは成長の屋台骨となる。NTTドコモは2021年10月に打ち出した中期戦略で2025年度の法人事業売上高を2兆円以上に拡大させるとぶち上げた。今後は加入電話網(PSTN)のIP網への移行などで減収影響も想定されるなか、2020年度実績の1兆6000億円から4000億円以上も上乗せする必要がある。達成には早期のシナジー(相乗効果)創出が欠かせない。

 とはいえ、ドコモとコムは組織の成り立ちも文化も大きく異なる。同じNTTグループ内の統合といってもM&A(合併・買収)におけるPMI(合併・買収後の統合作業)のような慎重さが求められる。実は危機意識を抱いた丸岡社長の指示のもと、いち早くコムとドコモのシナジーを出すための特命プロジェクトが動いている。それが「Go Togetherプロジェクト」である。

ドコモはBtoBの先の「toC」まで意識

 2022年7月の再編ステップ2を控え、このままでは新生NTTコムグループで一体感の熟成がうまくいかないのでは――。

 Go Togetherプロジェクトは、そんな危機意識から2022年1月、ドコモとコムの広報・人事のメンバー約30人の体制でスタートした。

 NTTがTOB(株式公開買い付け)によるドコモ完全子会社化を発表したのは2020年9月。当初から「NTTコムやNTTコムウェアのNTTドコモへの移管などグループ会社との連携強化について検討していく考え」としていたものの、再編の詳細が明らかになったのは、TOB発表から1年以上が経過した2021年10月だ。ドコモやコムで再編の検討に携わっていたのは幹部など一部に限られ、多くの社員には「今後どうなるのか」という漠然とした不安が残ったままだった。

再編の第2弾ではコンシューマー事業や法人事業といった機能別の統合を図った
再編の第2弾ではコンシューマー事業や法人事業といった機能別の統合を図った
(出所:NTTドコモ)
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 「実はコムとドコモは、お互いのことをよく知らない」

 Go Togetherプロジェクトを進めるNTTコミュニケーションズ ヒューマンリソース部社員サービス部門の高橋隆之部門長はこのように打ち明ける。

 コムは大企業を相手に稼働をかけて攻略するスタイルに対し、ドコモは大企業に限らず中堅・中小向けも幅広く手掛ける。コムはもっぱらBtoBだが、コンシューマー事業中心のドコモは法人部隊でもBtoBの先の「toC」まで意識した提案になる。仕事のやり方も目標もまるで異なる。

 ビジネスの展開エリアも違う。コムは大企業が集中する東名阪中心に展開するのに対し、ドコモは地域に多くの支社を持ち、地域への貢献が根付いている。

 「全く知らない人同士では、リスペクトもできなければ、シナジーも出せない」(NTTコムの高橋部門長)。そこでGo Togetherプロジェクトでは、コムとドコモが互いをもっとよく知る活動からスタートした。

 コムとドコモのメンバーが混在するGo Togetherプロジェクト内で話し合うだけでも両社の文化の違いが見えてきたという。

 「ドコモのメンバーと話していて驚いたのは、(携帯電話の契約数シェアが3〜4割のため)街を歩いている3分の1以上は顧客という意識が根付いている点。新鮮な驚きだった」(NTTコムの高橋部門長)。

 「ソリューションという言葉の一つとっても、ドコモとコムでまるで使い方が違った。ドコモはモバイル回線を軸にアプリを広げていくようなイメージだが、コムは複数のシステムに入り込んで構築するイメージだった」(NTTドコモ 法人ビジネス本部法人ビジネス戦略部総括・人材開発の濱森香織担当課長)。

 Go Togetherプロジェクトのメンバーは改めて、コムとドコモの違いを深掘りし、互いをもっとよく知る必要性に駆られた。