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 日経クロステックは5人の有識者を招き「ITインフラテクノロジーAWARD 2022」として、1位の「ビヨンドオーケストレーション」などを選出した。選考会に参加したのは、国立情報学研究所の佐藤一郎 情報社会相関研究系 教授、デロイト トーマツ コンサルティングの森正弥 執行役員、Publickeyの新野淳一 編集長/Blogger in Chief、野村総合研究所(NRI)の石田裕三 産業ITグローバル事業推進部 上級アプリケーションエンジニア、ウルシステムズとアークウェイの2社の社長を務める漆原茂氏だ。有識者5人それぞれが一番に推す注目技術を紹介する。

クラウドベンダーでも読み取れない

個人的注目技術:コンフィデンシャルコンピューティング

国立情報学研究所 情報社会相関研究系 教授
佐藤 一郎氏

 コンピューター上に安全な隔離された環境をつくることによって、アプリケーションだけでなく、OSさえもデータの読み取りや書き込みができないようにする技術の総称だ。当初はコンテンツ権利の保護に導入・利用されてきたが、最新のプロセッサーにはその技術が実装され、様々な処理に利用できるようになっている。パブリッククラウドで利用した場合、クラウドベンダーのオペレーターであってもデータを読み取れないメモリー領域をつくることができ、そこに機密データを置くことで安全性を高められ、「クラウドベンダーではなくプロセッサーベンダーを信じよう」という信頼対象の置き換えともいえる。

(写真:陶山 勉、以下同)
(写真:陶山 勉、以下同)
専門家がつくったモデルを上回る事例も

個人的注目技術:AutoML

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員
森 正弥氏

 機械学習モデルの生成プロセスを自動化する技術「AutoML」が進化している。代表的なツールには米DataRobot(データロボット)の「DataRobot」などがある。専門家がつくった機械学習モデルの精度を上回るような事例も出始めている。米Google(グーグル)や米Microsoft(マイクロソフト)などの大手クラウドベンダーもAutoMLツールを提供しているが、技術を持ったデータサイエンティストを助けるためのツールという色合いが強い。一般の従業員でも使えるツールという意味では、DataRobotやNECの「dotData」のようなオールインワンのパッケージも検討すべきだ。

通信をデフォルトで暗号化、速度改善も

個人的注目技術:HTTP/3

Publickey 編集長/Blogger in Chief
新野 淳一氏

 HTTPの新規格であるHTTP/3にQUICが採用された。通信がデフォルトで暗号化される点が大きな変化だ。HTTP/2以前は暗号化がオプション機能だった。加えてHTTP/2以前はトランスポート層のプロトコルにTCPを使用していたが、HTTP/3のQUICではUDPを採用する点も重要だ。通信のオーバーヘッドが少なくなり、通信速度の改善が見込める。HTTPで長らく利用されてきたTCPをUDPに置き換えられることに驚いており、技術の転換点に立ち会っているようで感慨深い。