量子技術とは何なのか、どんな原理で、何ができるのかを、一問一答形式で分かりやすく説明していきます。

量子コンピューター 一問一答
目次
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量子コンピューターの開発はいつ始まった?
問題28
量子コンピューターのアイデアは、ノーベル物理学賞受賞者でもあるリチャード・ファインマン教授が登壇した、1981年の「物理学と計算」会議の基調講演に遡るといわれます。
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量子コンピューターのソフト開発はハードの存在が必須?
問題27
量子コンピューターのプログラムは量子ビットに対する操作(論理ゲート)によって記述します。量子コンピューターのハードウエアとしてはいくつかの方式が研究・開発されていますが、プログラムはその実現方式とは独立しており、どの方法で量子ビットがつくられても動作します。
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量子コンピューターはどうやって正解を導く?
問題26
重ね合わせによってどんなに多くの計算が並列に実行できようと、その中から正解を取り出せなければ何の意味もありません。量子コンピューターのアルゴリズムには、望みの計算を実行するだけでなく、正解の確率を高める工夫が求められます。
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量子コンピューターの基本となる論理ゲートは?
問題25
量子コンピューターが使う論理ゲートにはさまざまな種類があります。ただし、その多くは他のゲートの組み合わせて作ることができます。基本となる論理ゲートの一つがXORゲートです。
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量子コンピューターのプログラムはどうやって書く?
問題24
量子コンピューターにおけるアルゴリズムの設計とは、回路図を書くことに相当します。普通のコンピューターになじんだ人にとっては、アルゴリズムというとプログラミング言語で記述するイメージが強いと思いますが、現状の量子コンピューターでは、論理ゲートやそれを組み合わせた機能部品をどうつなげて問題を解くかが、…
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量子コンピューターはなぜ問題を速く解ける?
問題23
量子コンピューターは量子の重ね合わせ状態を使って計算します。普通のコンピューターと量子版の足し算回路を比べてみましょう。並列に実行できる計算の数が指数関数的に増えることをうまく利用するアルゴリズムがあったときに、初めて量子コンピューターの計算回数を劇的に減らせます。
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量子コンピューターの演算は普通のコンピューターとどこが違う?
問題22
これまでのコンピューターと量子コンピューターの最大の違いは、普通のコンピューターでは0と1だけの計算だったのが、両方の状態を併せ持つ量子の「重ね合わせ」状態を使って計算ができることです。
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量子コンピューター、本当は遅い?
問題21
量子コンピューターは普通のコンピューターと同様に理論上、万能とされており、あらゆる計算が可能です。しかも問題17で見たように、普通のコンピューターで爆発的に(指数関数的に)多くの時間がかかる問題を、現実的な(多項式で見積もることができる)時間で解ける場合があります。
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量子コンピューターとAIの問題の解き方は何が違う?
問題20
現在のAIの基盤となる機械学習は、多くのデータから知識を獲得する技術です。ここでいう知識とは、たくさんのデータから見つけ出したパターンといえます。例えば画像を認識するAIに、たくさんの猫の画像を与えることによって、猫の目や鼻や口、体の形などの特徴のパターンを学習し、猫の画像を認識できるようになりま…
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量子コンピューターとAIはどちらが有望?
問題19
量子コンピューターの最大級の用途は、精密なシミュレーションを駆使した新しい材料や薬品などの開発です。地球温暖化や高齢化社会の進展で、優れた材料・薬剤に対する期待は鰻登りです。
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量子アニーリングと量子コンピューターは同じ?
問題18
量子アニーリングは、東京工業大学の門脇正史(現デンソー)氏と西森秀稔教授(現・同大学特任教授)が1998年に発表した技術で、カナダのD-Wave Systemsが積極的に製品化に取り組んでいます。
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量子コンピューターはどれくらい複雑な問題を解ける?
問題17
解きたい問題がどれくらい複雑かを調べる手段として、計算にかかる時間を見積もる方法があります。この観点からすると、とりわけ複雑な問題には、考える範囲をちょっと増やしただけで、計算にかかる時間が爆発的に増える傾向があります。暗号を例として説明しましょう。
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誤り訂正のない量子コンピューターは使い物にならない?
問題16
誤り訂正が実現するまで、量子コンピューターは実用面では無用の長物なのでしょうか。決してそうではありません。誤り訂正を適用する前の量子コンピューターは「NISQ(Noisy Intermediate Scale Quantum、ニスク)マシン」と呼ばれます。NISQマシンにはNISQマシンならではの…
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量子コンピューターの誤り訂正技術は進化している?
問題15
量子コンピューターでは、「素」の量子ビットを物理ビットといいます。また、複数の物理ビットを使って誤り訂正をし、量子の重ね合わせ状態を長時間保持できるようにした量子ビットの集まりを、まとめて論理ビットと呼んでいます。グーグルやIBMが使っている超電導の方式では、1論理ビットを実現するのに1000ほど…
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量子コンピューターの開発でネックになるのは?
問題14
連載の第9回で紹介したアンモニア合成のシミュレーションの論文には、シミュレーションに必要な量子ビットの数は100〜2000程度という記述があります。これならグーグルが目標として掲げている2029年に100万量子ビットの量子コンピューターができれば簡単に解けそうです。
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実用的な量子コンピューターが登場するのはいつごろ?
問題13
量子コンピューターの最大の課題は、実際に解きたい問題の解決に使えるハードウエアがまだないことです。何より、利用できる量子ビットの数が足りません。連載初回で紹介した川崎に設置されたIBMのマシンや、グーグルなどが開発中のマシンは、いずれも数十個の量子ビットしか備えず、さまざまな業界が直面する規模の問…
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量子コンピューターは既存のコンピューターを置き換える?
問題12
どれほど技術が進歩しても、量子コンピューターが既存のコンピューターを全部置き換えてしまうことはありません。原理上、量子コンピューターは普通のコンピューターが解ける問題をすべて解けますが、性能面で優位になる場面は限られています。同程度の性能しか出せない場面で高価な量子コンピューターを使うのはナンセン…
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量子コンピューターで解ける問題はいくつある?
問題11
指数関数的に難しさが爆発する問題の全てを、量子コンピューターが短い時間で解けるわけではありません。対象とする問題がある条件を満たす必要があります。その問題を量子コンピューターで解くための、効率的なアルゴリズムがあることです。
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量子コンピューターの得意分野、それはどこ?
問題10
米ボストン コンサルティング グループの市場予測では、2040年以降の量子コンピューターの市場を用途別に整理しています。大きな分類として、同社は「暗号」「最適化」「機械学習」「シミュレーション」の4つを挙げました。いずれも既に有望なアルゴリズムが見つかっている用途です。
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量子コンピューター、どんな問題が解決できる?
問題9
量子コンピューターは、従来のコンピューターでは解けなかった問題を解ける可能性があります。例えば地球温暖化がその一つです。