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IBMやグーグルといった量子コンピューターのトップ企業を擁する米国は、国としても2019年からの5年間で最大13億ドル(約1400億円)を量子技術につぎ込むことを決めています1)。2020年8月には、5年間で6億2500万ドル(約690億円)を投じてエネルギー省傘下の5つの国立研究所に「量子情報科学研究センター」を設立すると発表しました2)。
参考文献1) 「量子技術イノベーション戦略 フォローアップについて」、第8回量子技術イノベーション会議 資料1-1、2021年4月15日. 参考文献2) Department of Energy, "White House Office of Technology Policy, National Science Foundation and Department of Energy Announce Over $1 Billion in Awards for Artificial Intelligence and Quantum Information Science Research Institutes," Aug. 26, 2020.同様に、アリババなど量子技術も手掛けるIT大手を抱える中国は、2016年から2020年までの5年間で約70億元(約1200億円)規模の研究を実施した上、並行して量子研究拠点も整備しています1)。欧州では、欧州連合(EU)が2018年からの10年間で10億ユーロ(約1300億円)以上の研究プロジェクトを進めるのと同時に、ドイツや英国など国単位でも研究に投資しているのです3)。
参考文献3) 統合イノベーション戦略推進会議、「量子技術イノベーション戦略(最終報告)」、2020年1月21日.今後は米国などとの連携が進む可能性もあります。2021年4月の日米首脳会談で量子技術の研究や人材交流で日米が連携する方針が打ち出されました。2022年度にも具体的な計画が動き出すもようで、欧州を巻き込む可能性もあるようです4)。ひょっとすると今後の量子技術は、米国対中国といった強国間の対立を象徴する存在になっていくかもしれません。
参考文献4) 生川暁、「量子技術、日米共闘で中国対抗 知の交流には支障も」、日本経済新聞電子版、2021年6月6日.