テレワークではコミュニケーションが取りづらいから出社勤務に戻そう――。そうしないためには、テレワーク環境下でコミュニケーションの効率や生産性を高める策を講じていく必要がある。こうした策は多岐にわたるが、今回はオンライン会議で利用するツールを有効活用することで、対話を加速させる策を紹介しよう。
テレワークに取り組む企業の間でここ数年、急速に普及が進んだのがWeb会議サービスだ。あらかじめ共有したURLをクリックするといった簡単な操作で、オンライン会議を手軽に始められる。
テレワーク先進企業はWeb会議サービスの使い方にも工夫をこらす。ビジネスチャットや仮想的なホワイトボードを併用して、オンライン会議そのものの生産性を高めている。今回はWeb会議サービスなどを使って生産性向上を進める、ガイアックスとぐるなびの取り組みを紹介する。
Web会議とチャットを並行利用して対話
ガイアックスではオンライン会議中にビジネスチャットを併用することで、異なる内容のコミュニケーションを同時並行で取っている。例えばWeb会議サービスを使って議論をしている最中、ビジネスチャットを使って「会議内容を録音させてもらいます」「お手洗いに行ってきます」など、会議の議論とは関係ない内容についてメッセージを送るようにしている。
ガイアックスの流拓巳人事総務部長・人事支援チーム責任者は、「会議内容を録音させてもらいますといったことを、Web会議で伝えると議論がそのたびに停滞してしまう。しかし、ビジネスチャットでメッセージを送ることで議論を遮ることなく、用件などを伝えられる」とメリットを語る。
「会議で誰かがしゃべっている間に、ビジネスチャットをするのは失礼ではないか」といった忖度(そんたく)をしなくてよかったり、「会議では自身に関係しない話を含めて全部の話に耳を傾ける必要はない」といったスタンスを公認したりする社風が背景にあるという。こうした社風は対話加速の土台となりそうだ。
ガイアックスのオンライン会議の特徴は、会議の本題に関してもWeb会議とビジネスチャットを併用している点だ。複数の議題を一度のWeb会議で扱う場合、例えば最初の議題にそれほど関係しない参加者は、その後に取り上げる予定の別の議題について「この議題についてはこういう点が気になりました」など、ビジネスチャットでメッセージを送信。それをきっかけに別の参加者がビジネスチャットで議論を独自に進めるといった動きが出てきている。
ビジネスチャットによる議論も進められるように、あらかじめすべての議題を共有したうえで、オンライン会議を始めるようにしているという。ガイアックスの流部長は「ミーティングに参加していると、自身にはあまり関係ない議論が続くことがある。このタイミングで自身が関係する別の議題について、ビジネスチャットを使って先に議論を始めている。こうすることで、議論の幅が広げられるようになった。1回のオンライン会議にかける時間も短くなっている」とメリットを語る。
議論の内容にふさわしい有識者を「召喚」することも
ガイアックスが講じるWeb会議サービスの生産性向上策は、ビジネスチャットの「併用」だけにとどまらない。Web会議サービスを使ってオンライン会議中に有識者を「召喚」したり、Web会議室を「常設」したりする工夫が生まれている。
生産性向上策の例 | 概要 |
---|---|
併用 | ある議題について音声で議論するのと並行して、ビジネスチャットでも他の議題について議論する |
召喚 | あるテーマについて議論しているとき、そのテーマに詳しいメンバーに実施中のWeb会議に参加してもらう |
常設 | あるメンバーが待機しているWeb会議室に、関係者が都合のよいタイミングで参加できるようにする |
オンライン会議中に有識者を召喚する工夫とは、例えば「あるテーマについて議論していたとき、参加メンバーだけでは解決策が見いだせない」といった場面で役立つ。そのテーマに詳しいものの会議に参加していないメンバーに対して「今、このテーマで議論をしていますが解決策が見いだせません。実施中のオンライン会議に5分だけ参加してもらえませんか」といったメッセージを、ビジネスチャットでWeb会議室のURLとともに送る。
もし都合がつけば、メッセージを受け取ったメンバーに実施中のオンライン会議に参加してもらう。これが召喚だ。ガイアックスの流部長は「オンライン会議では有識者を会議中に呼んで、参加してもらうことがとても容易になっている。実施中の会議で議論が進むので、会議そのものの質が上がる。呼ばれた有識者も都合がつけば、その場ですぐに参加して説明すればよいので、応じやすい」とメリットを語る。
召喚はオンライン会議中、上司の判断が必要な場面でも役立つという。召喚ができれば「議論が進まないので、有識者や上司に参加してもらうように、次回の会議日程を調整する」といった手間をかけずに済む。会議運営や日程調整の面でも生産性が高まりそうだ。