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 「変革の足かせとなるのはレガシー。レガシーといっても、ITシステムに限った話ではない。それ以上に深刻なのは、組織やマインドセット、プロセスの問題だ」――。パナソニックの玉置肇執行役員グループCIO(最高情報責任者)は、日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが2021年11月17日に開催した「ITイノベーターズサミット」の基調講演でこう強調した。

パナソニックの玉置肇執行役員グループCIO
パナソニックの玉置肇執行役員グループCIO
(撮影:井上裕康、以下写真同)
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 これまでファーストリテイリングやアクサ生命保険でデジタルトランスフォーメーション(DX)をけん引してきた実績を持つ玉置氏は、2021年5月1日付でパナソニックのCIOに就任。玉置氏が推進しているのが、「パナソニックトランスフォーメーション(PX)」と呼ぶデジタル変革プロジェクトである。PXの内容について、玉置氏が公の場で語るのはこれが初めてということもあり、参加者・聴講者から高い関心を集めた。

テスラにあって日本企業にないものは「わりきり」

 玉置氏は「パナソニックのDX、新任CIO最初の100日間」と題して講演。冒頭、現在ソフトウエアを武器に自動車業界を席巻する米Tesla(テスラ)について触れ、「彼らの動きは、単なるトランスフォーメーション(変革)とかの次元の話ではない。(自動車産業の)破壊者そのものだ」と述べた。

 ソフトウエアを駆使して従来の自動車産業にはない価値観を提供するテスラ。ソフトウエアとハードウエアの一体開発という自動車産業の常識を壊し、ソフトウエアを更新し続け車の機能や性能を拡張していく戦略で、今まさに業界を席巻しようとしている。

 テスラの強みについて、「デジタルを基本としたビジネスモデルと、わりきり(身軽さ)」と玉置氏は分析する。テスラは従来型の自動車会社とは異なり、クルマ販売をオンラインに限定。ディーラーを持たないため販売奨励金もない。値引き販売もしない。下取りもしない。ハードウエアも大きく変えず、「ソフトウエアで勝負している」(玉置氏)。テスラにあって日本企業にないものは「わりきり」ということである。

 パナソニックを含む日本企業の多くを苦しめるもの、つまり変革の足かせとなっているものについては、「重いレガシー」と玉置氏は指摘する。重いレガシーとは、組織文化やマインドセット、業務プロセス、商流、ITシステムなどを指す。

 「レガシーというと、ITシステムにばかり目が行きがちだが、それだけではない。デジタルを駆使する企業に変貌するためには、組織文化やプロセスなども見直す必要がある」(玉置氏)。パナソニックはITシステムと同時に、プロセスやマインドなども見直し、変革を加速させる方針だ。