セルフメディケーション(自主服薬)で利用する薬として一般用医薬品(OTC医薬品)の漢方薬を選択する人が増えている。市場調査会社のインテージヘルスケア(東京・千代田)によると、1996年から2018年にかけてのOTC医薬品長期トレンドにおいて最も市場が拡大したのは漢方薬だった。2021年は新型コロナウイルスの予防対策の影響もあり微減の見込みだが、拡大傾向が続くという見方が多い。
その一方で、種類の多さや独特な漢方医学の考え方に抵抗感を示す人がいるのも事実だ。こうした現状に対し、デジタル技術を活用することで漢方を身近な存在にしようとするスタートアップが相次いで登場している。デジタル技術と組み合わさることによって、漢方という日本の伝統医学が新たな形に生まれ変わろうとしている。
LINE相談でハードル低く
セルフケアで漢方薬を利用する上でまず大きな障壁となるのは、どの漢方薬を選べばいいか分かりにくいという点だ。2017年に発出された「一般用漢方製剤製造販売承認基準」によれば一般用漢方薬として認められているのは294処方(種類)ある。また個々の漢方薬には複数の効果・効能があるため、症状に合っているものを自分で探すのは難しい。
2017年創業のわたし漢方(東京・渋谷)はLINEを活用したオンライン漢方相談サービスを展開している。わたし漢方の丸山優菜代表取締役は「町の漢方薬局をLINE上に作るイメージ」と同社のサービスを説明する。「漢方薬局に入りづらさを感じたり、長時間の問診を受ける余裕がなかったりする人も多い。行動に移るまでのハードルが高いのが課題だった」(丸山氏)といい、日常的に使う人が多いツールであるLINEを活用することにした。
LINEのチャット画面で悩みを抱えている症状などを答えると、回答内容に応じて独自のアルゴリズムが次の質問を出していき、候補となる漢方薬が絞り込まれる。この結果に基づいて同社の薬剤師と利用者との間で個別のカウンセリングを実施し、最終的なおすすめ漢方薬が提案されるという流れだ。提案されたものをわたし漢方から購入することもでき、その場合は1カ月分が自宅に郵送される。
2019年創業のスタートアップpluskampo(東京・千代田)が2021年11月から本格稼働させた「+kampo(プラス漢方)」も、オンライン問診に答えることで薬剤師が症状にあった漢方薬を選んでくれるサービスだ。定期購入する利用者向けには「+コンシェルジュサービス」もあり、定期的な健康チェックやZOOMを用いたオンライン相談なども受けられる。
やりとりにLINEを使う点や問診の進め方は競合と類似する点も多いが、pluskampoの特徴は対象とする症状を限定しているところにあるという。pluskampoは自社ブランドの製品を展開しており、現在は疲労と便秘に対応する6種類の漢方薬を販売している。笹森有起代表取締役は「入り口の症状を絞ることで特定の悩みに対するデータを集めやすくなる。フォローアップ情報などが集まれば問診の精度向上などにつながる」と語る。