全5439文字
PR

2022年春に自治体職員数十人がデジタル庁へ

2025年度末までに自治体の基幹系情報システムを標準準拠システムに移行する「自治体情報システム標準化・共通化」に向けて、2022年は標準仕様が出そろいます。現状出ている標準仕様は自治体規模ごとにつくられたものではないですが、現実には自治体の規模によって業務やシステムの状況が大きく異なります。各自治体の標準準拠システムへの移行を、具体的にどう実現していきますか。

 自治体の問題意識はデジタル庁でも認識しています。特に政令市では、今は(基幹系の情報システムは)カスタマイズされたものが多い。政令市については、一定規模のベンダーがPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)などの上にアプリケーションを開発し、その上で自治体ごとにカスタマイズの開発をしていくのが理想形です。

 一方、小規模自治体はパッケージ化されたものを使うケースが多いので、標準化にあたってはSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)でアプリケーションを選んでいただく仕組みにするのが理想形と考えています。アプリケーションは地方ベンダーや大手ITベンダーなどが開発し、それが(マルチクラウドで構成する政府共通システム基盤である)「ガバメントクラウド」に乗るイメージです。

自治体システム標準化では、自治体の声をどのように反映させていきますか。

 自治体とコミュニケーションを取りながら、精緻にする必要があるところはやっていきます。また2022年春からはこれまで以上に、自治体職員にデジタル庁へ来てもらいます。自治体システム標準化以外の仕事も担っていただきますが、数十人規模の増員になります。自治体の皆さんには、ただ待っているよりも一緒につくっていくため、デジタル庁に入ってきてほしい。一緒にやっていきましょうというのが一番のメッセージです。

 通常自治体から国への出向だと「研修」扱いになり、リーダーをお願いしにくかった。そこで、デジタル庁に来ていただく自治体職員の方たちは自治体に籍を残したまま、人件費はデジタル庁が持つ形にします。自治体の負担が極力少なく、意欲と能力のある方にリーダーをやっていただきたいからです。

 (内閣府大臣補佐官として進めた)VRS開発・運用では、自治体の現場で業務を担っている職員に出向してもらいました。その経験が、今のデジタル庁での取り組みに生きています。自治体の現場の職員らは、業務や情報システムをわかっている上に、その先に他自治体の職員とも情報交換や議論をするネットワークがあります。彼らと情報交換できたことがとても役に立ちました。

ガバメントクラウドには今後、行政手続きのオンライン化に向けたフロントサービス提供のためのSaaSやPaaSの導入も期待されています。どのように検討していますか。

 まだ取り組み始めたばかりですが、(デジタル庁の民間人材で各分野の責任者である)「CxO(最高責任者)」にも入ってもらいフロントサービスの理想形を検討しています。場合によってはプロトタイプをつくって、関係者に見せてそれを基に議論します。

 国民にとって行政サービスの利便性を左右するのはこうしたフロントサービスです。改善できるものはできるだけ早く進めますが、鍵になるのはマイナポータルです。この改善は優先順位を高くして検討しています。

個人情報保護、事後チェック能力の強化を

コロナ禍以前のワクチン接種では引っ越し時など自治体間でデータ共有がすぐにできない課題がありましたが、コロナ禍に際して構築したVRSではデータ連携をすぐにできるようにしました。こうした自治体間や国と自治体でのデータ連携の課題について、どのように解決していきますか。

 (データを管理するシステムを)今後ガバメントクラウドに乗せることを考えると、どの業務から乗せられるか見ていく必要があります。例えばVRSは、(自治体がワクチン接種記録を管理する)「予防接種台帳」をクラウドに乗せたイメージです。ただ、実際多くの自治体では予防接種台帳と「健康管理システム」という2種類のアプリケーションを連携して運用しています。こうした、連携するアプリケーションを含めてガバメントクラウドに乗せる、わかりやすいモックアップを提示する必要があると考えています。VRSに加えて、「複数の健康管理システムをSaaSとして提供し、自治体はその中から選択することができる」というのがモックアップのイメージです。

モックアップの候補は他に何がありますか。

 (住民が窓口で申請書に記入しないで職員の聞き取りによってワンストップで手続きができる)北海道北見市の「書かない窓口」も一例です。地方発で全国展開される良い例になると思います。

データの連携や活用にあたっては、個人情報保護が重要になります。

 牧島かれんデジタル大臣体制の良いところは、大臣が個人情報保護委員会も担当している点です。(2021年11月に発足した)「こどもに関する情報・データ連携 副大臣プロジェクトチーム(こどもPT)」では、個人情報保護委員会にも入ってもらって政策議論を進めています。個人情報保護委員会は個人情報保護に関する政策だけでなく、(監視・監督を含む)執行も行います。

 デジタル臨調で構成員が発言してくれたのですが、デジタル社会では技術進展が速いので、事前規制よりも事後チェックが重要になります。事後チェックの能力を高めていく必要があり、執行体制の強化も議論になります。その一番具体的な例をこどもPTで進めています。

インタビューに答える小林史明デジタル副大臣
インタビューに答える小林史明デジタル副大臣
(写真:的野 弘路)
[画像のクリックで拡大表示]