米Intel(インテル)子会社のイスラエルMobileye(モービルアイ)は、1チップでレベル4の自動運転システムを実現できる車載SoC(System on Chip)「EyeQ Ultra」を「CES 2022」で発表した。5nm世代の半導体プロセス技術で製造し、23年後半にファーストシリコン(チップ試作)を、25年に車載グレード品を生産する予定だ。
モービルアイ社長兼最高経営責任者(CEO)のAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)氏は、「EyeQ Ultraによって、レベル4の自動運転システムを1000米ドル(11万5000円、1米ドル=115円換算)以下にできる」と述べた。消費電力もシステム全体で100W以下に抑えられるという。チップ内に冗長性を持たせていることも特徴で、外部マイコンと組み合わせることで、自動車の機能安全規格におけるASIL-D対応の自動運転システムを実現できるという。
EyeQ Ultraは実績の高い車載SoC「EyeQ」シリーズのアーキテクチャーを基に、4種類、計64個のアクセラレーターを搭載した。(1)人工知能(AI)のディープラーニング(深層学習)演算に特化した「XNN」、(2)FPGAに近いCGRA(coarse-grained reconfigurable architecture)を使った「PMA」、(3)DSPに近い「VMP」、(4)マルチバレルスレッド型のプロセッサー「MPC」である。それぞれが異なるワークロードに対応することで、高い演算効率を実現するという。なお、CPUはRISC-Vコアを12個搭載。256GFLOPSのGPUや、2.4Gピクセル/秒のISPも実装する。
8ビット整数型のディープラーニング演算性能は176TOPS(毎秒176兆回)で、これは従来の車載SoC「EyeQ5」の10個分に相当するという。同社はこれまでの開発プロジェクトにおいて6~8個のEyeQ5を使ってレベル4を実現してきた。その経験から、「10個分のEyeQ5に相当する性能を1チップで実現する必要がある」(同氏)と判断した。