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 遠隔での習い事や観光体験の共有など、コロナ禍で需要が急増する新たなニーズに向けたウエラブル端末が登場した。デバイスやソフトウエアの開発などを手掛ける東京大学発のベンチャー、フェアリーデバイセズ(東京・文京)のLTE搭載首掛け型端末「LINKLET」である。重さは170gで、連続約2.5時間、待ち受けで13.5時間使える。2022年4月に一般向けに販売を開始する予定だ。価格は現時点では未公表。

フェアリーデバイセズが「CES 2022」に出展したLTE搭載首掛け型端末「LINKLET」。「CES 2022 Innovation Awards」を3部門で受賞した。
フェアリーデバイセズが「CES 2022」に出展したLTE搭載首掛け型端末「LINKLET」。「CES 2022 Innovation Awards」を3部門で受賞した。
(写真:フェアリーデバイセズ)
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 最大の特徴は、内蔵するカメラが捉えた利用者の一人称視点の映像と音声を、オンライン会議システムとして普及している「Zoom」や「Microsoft Teams」で簡単に配信できる点だ。このため、遠隔レッスンで先生が自分の手元の映像を配信したり、逆に生徒の手元映像を先生が見て指導することなどができる。

LINKLETが配信する装着者の手元映像の例。
LINKLETが配信する装着者の手元映像の例。
(写真:日経クロステック)
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 もちろん、遠隔レッスンをスマートフォン(スマホ)やパソコンを使ってZoomなどで配信している人は既に数多くいるし、頭部や衣服に装着するカメラを使っても同様のことはできる。しかし、スマホなどでは一人称視点で撮影するのは難しく、頭部や衣服に装着したカメラでは映像が揺れたりして視聴に耐えないことが多い。首掛け型のLINKLETは映像が安定しており、また雑音の中でも声を選択的に拾う独自技術を搭載しているため、こうした用途に最適化されているという。

 同社取締役の竹崎雄一郎氏は、「この端末の肝は現場の映像と音声を同時に記録できる点にある」と話す。実はAI(人工知能)は映像だけでは学習ができず、人間がアノテーション(メタデータを注釈として付与)をすることで学習ができるようになる。一方、人間が指導時などに発する声はそのまま学習用のデータとして使えることが多い。遠隔レッスンなどの現場でのビッグデータ取得用端末としての期待も大きいのだ。

 フェアリーデバイセズはLINKLETの世界展開を目指しており、米ラスベガスで1月5~7日に開催されたテクノロジー見本市「CES 2022」に出展した。同見本市では、「Wearable Technologies」「Streaming」「Digital Imaging/Photography」の3部門で「CES 2022 Innovation Awards」を受賞した。3部門の同時受賞は珍しく、今回、日本企業の出展社としては唯一だったという。