2年ぶりのリアル開催を実現させた、世界最大のテクノロジー見本市「CES 2022」(2022年1月5~7日、主催:全米民生技術協会)。開催直前に新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が急拡大したことにより、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)、米Google(グーグル)、米Meta(メタ)、カシオ計算機など大手が相次いで出展を取りやめ、テクノロジー業界のお祭りに影を差したのは事実だ。それでも、800社以上のスタートアップを含む2300社以上の企業が世界から出展し、約4万人がラスベガスに集った。CES 2022の見どころを振り返り、2回に分けて紹介する。
「電気自動車(EV)ビジネスへの参入を本格的に検討するため、22年春に事業会社『ソニーモビリティ』を設立する」
ソニーグループ社長の吉田憲一郎氏が、開幕前日の報道関係者向けイベントでサプライズ的に明らかにしたEVへの参入表明は、間違いなく今回のCESのハイライトだ。同社は20年のCESでEVの試作車両「VISION-S(01)」を初公開した。当時、多くのメディアが「ソニーがEVに参入」と書き立てたが、同社はこれまで「あくまでもセンサーの性能を上げるための実験車という位置づけ」と説明してきた。ところが今回、正式にEVという“本丸”で勝負する意向を表明したわけだ。
同事業を率いる同社常務でAIロボティクスビジネスグループ部門長の川西泉氏はその背景を、「あるタイミングをきっかけに0から1になったわけではなく、選択肢の一つとして初めから視野には入っていた。でもスタート時点では知見のない部分もかなりあったし、異業種の中で自動車を造ることの難しさもあり、実験を重ねていく作業がかなり必要だった。後になり、それを乗り越えられ、自分たちの持つ技術を生かせる領域がかなりあることも分かってきた。その可能性が見えてきたから、今回の判断に至った」と、評論家で日本画質学会副会長の麻倉怜士氏のインタビューで答えている。
リンク: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01911/00027/ソニーは今回、SUV(多目的スポーツ車)の新しい試作車両「VISION-S 02」も初披露した。セダンタイプの初代と共通のEV・クラウド基盤を採用する。40個のセンサーを載せる。例えば、広い車内空間を利用したエンターテインメント体験や7人乗りのバリエーションなどを生かした提案を行っていきたいという。組み立ては初代と同じく、オーストリアMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)が担った。
VISION-S 02のフロント部(ダッシュボード部)は初代のものを踏襲している。計器類はなく、端から端まで3つの横長のディスプレーを敷き詰めた。それらに速度計や扉の開閉といった車体の状態、エンターテインメント関連コンテンツや地図などの情報を表示する。
加えて横長ディスプレーの左右にそれぞれ1つずつ電子ミラー用のディスプレーも配置している。すなわち、フロント部で合計5つのディスプレーを備える。後部座席にも2つのディスプレーを配置しており、ソニーカーは「ディスプレーカー」と呼んでもいいくらいだ。
ソニーはVISION-Sの重点領域として「セーフティー(安全性)」「アダプタビリティー(適応性)」「エンターテインメント」の3つを挙げる。このうち車室内ではアダプタビリティーとエンターテインメントの2つを主に体現していた。例えば、エンターテインメントでは、映像配信サービス「BRAVIA CORE (ブラビアコア)for VISION-S」を用意する。音楽では、ユーザーの周囲360度を包み込むように音場を形成する独自技術「360 Reality Audio」に対応した配信サービスを聴けるようにした。
またゲームでは、自宅の据え置き型ゲーム機「PlayStation」に接続できる「リモートプレイ」に対応。クラウド型のゲーム配信サービスにも対応する予定だという。