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 「ソフトウエア、起動!」

 2022年1月7日、風変わりな掛け声がサーキットに響き渡った。観客が見守る中でおもむろに動きだすレーシングカー。よく見ると、運転席には誰も座っていない(図1)。

図1 自動運転車のみで競い合うレース「the Autonomous Challenge @ CES」
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図1 自動運転車のみで競い合うレース「the Autonomous Challenge @ CES」
(出所:Indy Autonomous Challenge)

 ここはテクノロジー見本市「CES 2022」の会場に程近い、米ラスベガス・モーター・スピードウェイ。この日開催されたのは、自動運転車のレース「the Autonomous Challenge @ CES」だ。交通システム開発を手がける非営利団体である米Energy Systems Network(以下、ESN)などが、CES 2022の関連イベントとして開催した。

 優勝賞金が15万ドル(1ドル=114円換算で1710万円)とだけあって、参加者も米国内にとどまらない。欧米やアジア、中東の大学から集まった5チームが予選に名を連ねた。

車両に送れる指示は、走行速度だけ

 競い合うのは、自動運転車を制御するソフトウエアの優劣だ。今回のレースでは、高速走行時の車両制御技術に焦点を絞った。車速が高いほど、運転行動の3要素「認知・判断・操作」を短時間で完了しなければならないので難しい。

 シャシーやタイヤといった車体を共通とし、制御ソフトを各チームが開発した。チームから車載コンピューターに送信できる情報は、走行する速度のみだ。共通車両である「Dallara-built AV-21」は、内蔵するコンピューターやセンサーなどを使って自律的に走行できる(図2、3)。

図2 コンピューターやセンサーを搭載した自動運転車「Dallara-built AV-21」
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図2 コンピューターやセンサーを搭載した自動運転車「Dallara-built AV-21」
レースでは、レーシングカーを手がけるイタリアDallara(ダラーラ)などが開発した「Dallara-built AV-21」を使う。サーキット上を走る車両や障害物を検知するため、3種類のセンサーを搭載した。図の黄色の丸で囲んだ部分がセンサー。(出所:Indy Autonomous Challengeの配信画面をキャプチャー)
図3 LiDARやレーダーで周囲環境を認識して自律走行
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図3 LiDARやレーダーで周囲環境を認識して自律走行
(出所:Indy Autonomous Challengeの配信画面をキャプチャー)

 車両や障害物を検知するため、3種類のセンサーを搭載した。(1)車両周囲の物体との距離を測るLiDAR(レーザーレーダー)、(2)並走車両の速度を検知するレーダー、(3)車両周囲の映像を撮影するカメラだ。

 これらに加えて、「ほぼセンチメートルの精度」(ESN)で車両位置を測定できるGPS(全地球測位システム)アンテナなどを搭載した。

 センシング情報の通信などに異常があれば、車両は即座に停止する。車両が壁にぶつかるような事故が起こらないよう、安全性を確保するためだ。実際のレースでは、GPS情報の送信に不具合が生じ、車両がスピンして停止する姿がみられた(図4)。

図4 伝送情報をロストすると緊急停止
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図4 伝送情報をロストすると緊急停止
例えば、出場チームの1つである韓国KAISTは、レース中にGPS情報の伝送が途切れ、スピンしながら停止する場面があった。(出所:Indy Autonomous Challengeの配信画面をキャプチャー)

 優勝したのは、イタリア・ミラノ工科大学と米アラバマ大学の合同チーム「PoliMOVE」である。最高速度278km/hでも自動運転車を制御できるソフトを開発してみせた。勝因は、3段階に分けて実施したソフト性能の検証だ。