全2710文字
PR

 ソニーグループが電気自動車(EV)の市場投入に向けて本格検討に入るなど攻めの姿勢を鮮明にしている。市場評価が各事業の価値の合計を下回る「コングロマリット・ディスカウント」を長く指摘され続けてきたが、ここにきて多様な事業を手掛ける潜在力を生かし始めている。各事業のシナジー(相乗効果)を引き出す鍵を握るのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)だ。

 「ソニーGならではの多様なポートフォリオをいかに生かすか。そのための手段がDXだ」。同社でCDO(最高デジタル責任者)を務める小寺剛常務は、ソニーGにおけるDXの役割をこう解説する。

連結営業利益は初の1兆円超えへ

 ソニーGの業績は好調だ。同社の2022年3月期の売上高(国際会計基準)は前期比10%増の9兆9000億円、営業利益も同8.9%増の1兆400億円を見込む。会計基準の変更があったため単純比較はできないが、同社として初めて、営業利益は1兆円の大台を超える見通しだ。

ソニーグループにおける売上高の推移
ソニーグループにおける売上高の推移
2021年度から国際会計基準を適用。2020年度までは米国会計基準。2021年度は予想(出所:ソニーグループの資料を基に日経クロステック作成)
[画像のクリックで拡大表示]
ソニーグループにおける営業利益と営業利益率の推移
ソニーグループにおける営業利益と営業利益率の推移
2021年度から国際会計基準を適用。2020年度までは米国会計基準。2021年度は予想(出所:ソニーグループの資料を基に日経クロステック作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 成長路線に回帰したソニーGだが、ここに至るまでの道のりは曲折をたどった。持ち株会社制に移行前の旧ソニーは2012年3月期に、過去最大となる4566億円の最終赤字(米国会計基準)を計上。株価は1000円を割り込み、32年ぶりの安値圏に沈んだ。

 2012年4月に社長兼CEO(最高経営責任者)に就いた平井一夫氏(現シニアアドバイザー)が陣頭指揮を執り、事業構造改革を断行。平井氏の就任直後に発表した経営計画では、グループ全体で約1万人の人員削減を盛り込んだ。

 業績不振の主因の1つだったテレビ事業に関しては、「量から質への転換」を掲げ、販売会社の集約などを進めた。2014年には同事業を分社化。「VAIO」ブランドで展開するパソコン事業も同年、国内投資ファンドの日本産業パートナーズに売却した。

 一連の事業構造改革が実を結ぶ形で、ソニーの業績は回復。2018年4月に平井氏からCEOのバトンを受け継いだ吉田憲一郎会長兼社長の下、2021年4月には持ち株会社体制に移行し、社名を「ソニー」から「ソニーグループ」に変更した。祖業のエレクトロニクスだけでなく、エンターテインメントや金融など幅広い事業で稼ぐ方針だ。今では連結売上高の半分、営業利益で6割をエンタメ事業が稼ぎ出す。

 2022年1月には、米ラスベガスで開催したテクノロジー見本市「CES」で、EVの事業化を進める新会社「ソニーモビリティ」を2022年春に設立する計画を明らかにした。

DXフォーラムで成功事例を共有

 ソニーGが一段の飛躍を遂げるためには、多様な事業を抱えるコングロマリットの潜在力を引き出す仕組みが欠かせない。小寺常務は「世界のプラットフォーマーと真っ向から戦うというよりは、ソニーならではの多様なポートフォリオを生かしていく」と力を込める。

ソニーグループにおけるDXの役割
ソニーグループにおけるDXの役割
(出所:ソニーグループの資料を基に日経クロステック作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 その手段がDXだ。ソニーGのDXで中心的な役割を担うのが「DXフォーラム」という枠組み。DXフォーラムは年3~4回、日米それぞれで開催する。2021年11月末から12月初めに開いた第7回では、日米合わせてグループ19社、計230人ほどがオンラインで参加した。