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ソニーグループは多様な事業を抱え、ともすると遠心力が働きやすい。「One Sony」実現の鍵を握るのがデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。ソニーグループの潜在力を引き出すため、どんなデジタル戦略を立案・実行しているのか。CDO(最高デジタル責任者)を務める小寺剛常務に聞いた。

(聞き手は山端 宏実=日経クロステック/日経コンピュータ)

小寺 剛(こでら・つよし)氏
小寺 剛(こでら・つよし)氏
1992年4月ソニー入社。2016年6月執行役員ビジネスエグゼクティブ。2017年10月ソニー・インタラクティブエンタテインメント社長兼CEO。2018年6月ソニー常務。2021年4月ソニーグループ常務CDO(現職)。(写真:的野 弘路)
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ソニーグループとして、どんなデジタル戦略を描いていますか。

 ソニーグループならではの多様なポートフォリオをいかに生かすか。そのための手段の1つがデジタルトランスフォーメーション(DX)です。多様な事業ポートフォリオの価値を最大化するという視点で、テクノロジーやデータはものすごく重要な役割を果たします。

 特にGAFAMなどの大手プラットフォーマーは、既にグローバルで独自の基盤を確立し、世界中のありとあらゆる人々をつなげる前提でビジネスを展開しています。一方、我々はこうしたプラットフォーマーと真っ向から戦うというよりは、ソニーグループならではのポートフォリオを生かして顧客との接点を広げたい。

 今、我々が提供する商品やサービス、体験などを通して約1億6000万人の顧客と直接つながっていますが、これを長期的に10億人へ増やしたい。そのために、データドリブンなカルチャーを醸成し、インフラ整備やリテラシー向上など色々な形でDXに取り組みます。

 これまで我々は、顧客と関係を深めていくときに「より多く買ってほしい」というマインドセットが出発点になっていました。これをDXによって、「より長く使ってほしい」という考え方に変えていきたい。サービスやコンテンツの売り切りではなく、顧客と継続的な関係を築き、次の購買機会につなげていく流れです。

デジタルやIT部門はイネーブラーであれ

顧客と長く、深い関係を築くために、どんな仕組みが必要になりますか。

 10億人の顧客と直接つながるという長期的な目標・ビジョンを達成するには、今まで以上に高いアンテナを立て、高い目線で顧客と接していかなければなりません。そのための手段として、グループ横断で使える共通のインフラやデータ利活用のリテラシーが必要になります。

 例えばデータの定義をみても、個々のグループ会社ごとにばらばらです。データの定義が異なるので、グループ会社間でデータをやり取りしても、同じように理解されないリスクがあります。共通のインフラやプロセス、リテラシーがあればこうした誤解がなくなり、より効率的、効果的に顧客との関係を深められます。

 私は長く(家庭用ゲーム機の)プレイステーションに関わっていました。特に「プレイステーションネットワーク(PSN)」を育てることに10年以上注力し、データドリブン経営を先んじて進めてきました。吉田(憲一郎会長兼社長)からは「PSNで得た知見をグループ内でより広く活用してほしい」という期待を伝えられています。

 大手のプラットフォーマーとは違う、ソニーグループならではの戦い方を考えたとき、デジタルやIT部門は全社のつながりを意識しながら、テクノロジーやデータを活用し、グループ各社をサポートする「イネーブラー(支援者)」であるべきです。