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 無人の建設機械を遠隔地から操作し、地盤を掘削して巨大メッセージを浮かび上がらせるという企画が、2021年末に実現した。発案者は山梨県南アルプス市の建設会社だ。リモートワークの普及が全業界で進むなか、「建設現場だってリモートワークの選択肢があることを見せたい」という一心で実現にこぎ着けた。将来の担い手となる若手に届けるために、施工の様子はYouTubeによってライブ配信した。

 2021年12月20日と21日、山梨県中央市を流れる釜無川の河川敷に、「2022 POWER」の立体的なメッセージが刻まれた。1文字当たりのサイズは縦12m×横5.5m。これを“書いた”のは、無人のICT(情報通信技術)建設機械だ。

2021年12月20日、21日、遠隔操作や通常の操作を組み合わせて、地盤を掘削し河川敷に「2022 POWER」のメッセージを刻んでいる様子。実作業時間は10時間程度(写真:湯澤工業)
2021年12月20日、21日、遠隔操作や通常の操作を組み合わせて、地盤を掘削し河川敷に「2022 POWER」のメッセージを刻んでいる様子。実作業時間は10時間程度(写真:湯澤工業)
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2021年12月21日の作業の様子。800km離れた場所から建機を操作した。文字は既に完了しており、外枠を整地している様子。自動制御機能が働くため、設計データの値よりもバケットが下がらない(動画:日経クロステック)

 設計データを基に建機を自動制御するマシンコントロール(MC)を使用。そこに、遠隔操作を組み合わせた。建機に搭載したカメラ3台と現場を俯瞰(ふかん)するカメラ3台の映像を見ながら、離れた場所にいるオペレーターが操作して、無人のバックホーが文字を奇麗に仕上げていく。

 この一連の取り組みを手掛けたのは、地元建設会社の湯澤工業(山梨県南アルプス市)、建機のレンタルを手掛けるカナモト(札幌市)、富士建(佐賀市)だ。国土交通省甲府河川国道事務所の全面的な協力の下、実現に至った。

 発案者である湯澤工業の湯沢信常務は、次のように話す。「新型コロナウイルス禍でいろいろな業界がリモートワークを導入するなか、建設現場も同様にリモートワークの可能性があることを示したかった」

 慢性的な人手不足に悩む建設業界では、担い手の確保に力を入れている。ただし昔からの3K(きつい、汚い、危険)のイメージは払拭できず、若手はなかなか入ってこない。どうすれば若手が建設業界に興味を持ってくれるのか。そこで湯沢常務が目を付けたのが、「ICT化」の取り組みだ。

 「IT業界などを格好いいと感じて志す人がいる。それは格好良くて“わくわく”を感じるからだと思う。そのわくわくが建設業界には少なかった」と湯沢常務は言う。若手の入職を希望しているのはどの業界も同じ。そこで、わくわくを感じられる仕掛けとして湯沢常務が考えたのが、無人建機の遠隔操作だった。

湯澤工業の湯沢信常務(写真:日経クロステック)
湯澤工業の湯沢信常務(写真:日経クロステック)
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バックホーの操縦席には、カナモトが開発したロボット「KanaTouch(カナタッチ)」を搭載。後付けできる遠隔操作システムだ。遠隔地から操作すると、カナタッチがレバーなどを操縦する(写真:日経クロステック)
バックホーの操縦席には、カナモトが開発したロボット「KanaTouch(カナタッチ)」を搭載。後付けできる遠隔操作システムだ。遠隔地から操作すると、カナタッチがレバーなどを操縦する(写真:日経クロステック)
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