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 2級土木施工管理技士の資格を持つ技術者でありながら、お笑い芸人に転向した異色の漫才コンビがいる。「元気丸」だ。2人が繰り出すネタは全て土木にまつわるものの、土木を知らない人でも笑えるように気が配られており、土木の魅力を伝える新しい発信手段になる可能性を秘めている。2020年11月には、土木学会の土木広報センターが土木広報大使に任命した。

 「漫才」と「土木」――関係が無いはずの両者を組み合わせ、土木芸人として活動する2人組の「元気丸」。ツッコミ担当の水戸竜司氏とボケ担当の北岡一成氏は、送電線の工事を主に手掛ける建設会社で働いていた経験がある。現在は、芸能事務所のオフィスまめかな(東京・渋谷)に所属している。

2人組のお笑い芸人「元気丸」。左がツッコミ担当の水戸竜司氏。右がボケ担当の北岡一成氏。コンビ名の由来は、広島県のスポーツ情報番組「進め!スポーツ元気丸」(写真:日経クロステック) <p>
2人組のお笑い芸人「元気丸」。左がツッコミ担当の水戸竜司氏。右がボケ担当の北岡一成氏。コンビ名の由来は、広島県のスポーツ情報番組「進め!スポーツ元気丸」(写真:日経クロステック)

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 元気丸のネタには、工事現場での経験などが生かされている。「土木の仕事さえやっておけば、どんな仕事でもできる」「土木の要素を取り入れれば、どんな催し物も盛り上がる」といった前置きから入り、KY活動を行う美容師や結婚式で朝礼を始める新郎などの役を演じる。日常にありそうであり得ない状況が笑いを誘う。

 広島市出身の2人は、呉工業高等専門学校の環境都市工学科で土木分野を学んだ同級生だ。呉高専を卒業した後、水戸氏は佐藤建設工業(東京・品川)に就職。北岡氏は同校の専攻科に進んでさらに2年学び、水戸氏と同じ会社に就職した。

 お笑いの世界に入るきっかけをつくったのは、2人に共通の同級生だ。同級生から誘いを受けた水戸氏と北岡氏は、勤めていた建設会社を辞めて3人で活動を始めた。しかし、紆余曲折(うよきょくせつ)を経て1年もたたずに解散。改めて、水戸氏と北岡氏で「元気丸」を14年に結成した。

 建設会社では、つらさも楽しさも経験した。「工事中に、鉄塔の上で待機する時間がある。風や日光を遮るものが無いため、夏は暑く、冬は寒くて大変だった。一方、地方の現場が多く、普段行けないような地域で飲み屋を巡れたのは楽しかった。お笑いの世界への誘いを受けなかったら、今も同じ会社で働いていたと思う」(水戸氏)

 土木に特化した漫才を繰り広げる2人だが、コンビを結成した当初は、全く異なるネタを作っていたという。「むしろ、辞めてしまった土木からは距離を置くことを考えていた」と北岡氏は当時を振り返る。

元気丸の名刺。工事現場で注意を促す黄と黒の配色を採用している(写真:日経クロステック)
元気丸の名刺。工事現場で注意を促す黄と黒の配色を採用している(写真:日経クロステック)
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