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 経済産業省が公開している「DXレポート」は、「2025年の崖」について警鐘を鳴らしている。レガシー化したメインフレームのCOBOLシステムがデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻害しており、この課題を克服できない場合、DXを実現できないだけでなく、2025年以降は年に最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとしている。

 しかし、「2025年の崖」というキーワードは実は日本でしか使われていない。筆者はレガシーモダナイゼーションをテーマにCOBOLシステムについて海外の関係者と話す機会が多いが、海外にはそんな「崖」は存在しない。

 今回はフィリピン、中国、韓国のアジア3カ国のCOBOL事情を解説しよう。

フィリピンのCOBOL事情

高度なCOBOL技術者にシステム開発を依頼できる

 フィリピンでは1960年、最初のコンピューターである「IBM 650」が国土局に設置され、土地測量の計算に利用されるようになった。

参考資料(外部リンク): IBM Archives: Philippines chronology

 その2年後、フィリピンのAmerican Life Insuranceがデータ処理システム「IBM 1401」の運用を開始した。これがフィリピンにおけるメインフレームとCOBOLシステムの始まりである。

 フィリピン大学コンピューターセンターは、フォード財団と米IBMからシステム開発を支える人材育成についての助成を受け、1968年にIBMのメインフレーム「System/360モデル40」の利用を開始した。

 現在、フィリピンの大学のコンピューターサイエンスのカリキュラムでは、プログラミング言語としてCOBOLを取り上げたコースはほとんど提供されていない。しかし、IT分野に強みを持つマニラのマプア大学のように、ビジネスコースと共にCOBOLのプログラミングコースを提供している大学はある。

 ビジネスの現場では、COBOLを利用している欧米の大手銀行や金融機関において、IT開発のアウトソーシング先としてフィリピンがトップクラスに位置づけられているとされている。こうしたプロジェクトをサポートするために、フィリピンの開発受託企業はCOBOL開発者を育成し雇用している。英語を話し、高度な訓練を受けた技術者に対し、比較的低いコストでシステム開発を依頼できる。例えば、マニラにあるAccenture Advanced Technology Centers in the Philippines(ATCP)では、1000人を超えるCOBOLエキスパートが勤務している。