開発されてから20年以上経過したCOBOLシステムは、その根幹の業務仕様や設計思想がわからなくなり、ブラックボックス化が進むことでますます手が付けられなくなる。また、繰り返される保守作業、屋上屋を重ねる改修による複雑化、コードのクローンが加速することで、アプリケーションプログラムの劣化が進む。今回は、このようにレガシー化したCOBOLシステムを再生させる方法について解説する。
間近に迫っている2025年の崖
夏休みも終わりに近づくと、宿題の締め切りが迫ってきた子供のころを思い出す。経済産業省の研究会が2018年に公表したDXレポートは「2025年の崖」を指摘していた。レガシーシステムがデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻害することで、2025年以降は年に最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとする問題だ。この指摘から4年が経過したが、まだまだ宿題は終わっていない。その間に、国内最大シェアを持っていた富士通のメインフレーム事業撤退の発表があり、時間があると考えていた企業も対策が急務になってきた。
筆者が所属するモダナイゼーション部門への問い合わせも急増しており、ますます宿題が増えている。筆者は「レガシーなシステムをモダナイズしたい」という相談を受けると、まずはインフラ、アプリケーション、業務のいずれを対象にどれくらいの期間をかけられるのかを確認する。また、どのくらいの重要性があるシステムか、どのように人材を成長させたいか、レガシーシステムにかけている現状のコストとモダナイズにかけられるコストがどの程度かといったことを考慮し、ヒト・モノ・カネの観点から課題と目標を明確に優先付けする必要がある。
子供のころ、宿題を自分ですべて終わらせることができないとわかった時点で、怖い先生の宿題、友達に写させてもらえる宿題、両親に手伝ってもらえる宿題を、冷や汗かきながら仕分けしていたことを思い出す。レガシーCOBOLシステムのモダナイゼーションを推進する立場の方には、期限を強く意識して問題を先送りせず先手を打ってほしい。
1986年に公開された映画「トップガン」の36年振りの続編「トップガン マーヴェリック」では、主役のマーヴェリック大佐(トム・クルーズ)が教官として若きパイロットに厳しい訓練を課すが、最後は自らが困難なミッションに参加する。1970年代の戦闘機で最新鋭戦闘機との性能差を腕前とコンビネーションでカバーし活躍するのだ。1962年生まれのトム・クルーズと同年代のCOBOL世代には、先頭に立って最後のミッションに向かってほしい。
では、前置きはこれくらいにして、「宿題」であるレガシーCOBOLシステムの再生方法を紹介しよう。