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 デジタルトランスフォーメーション(DX)においてデータベース(DB)のクラウド化は重要なポイントです。クラウドDBサービスを利用することでDXの実現に不可欠な柔軟性やスピードを得られるからです。加えてコスト面や管理の容易さから、昨今ではオンプレミスDBのクラウドへの移行を多くの企業が検討しています。

 しかし、DBのクラウド移行は難度が高い作業です。特にミッションクリティカルなサービスのDBは一般的にスキーマ(テーブルやインデックス、ストアドプログラムが含まれる論理的な集合)やデータ量が多く、移行作業のための調査や実際の移行作業がより難しくなります。さらにそのようなサービスは可用性の要件も厳しいため停止できる時間に限りがあります。そのような理由もクラウドへの移行を難しくしています。

 クラウド移行を機にライセンス費用がかかる商用DBから無償で利用できるOSS(オープンソースソフトウエア)DBに切り替えたいと考える企業もあるでしょう。DBMS(データベース管理システム)を変更する場合、スキーマやSQLの変換が必要となり、DB移行の難度はさらに高くなります。

 そこで検討したいのがクラウド移行サービスです。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)の「Amazon Web Services(AWS)」、米Microsoft(マイクロソフト)の「Microsoft Azure(Azure)」、米Google(グーグル)の「Google Cloud」といった主要なパブリッククラウドベンダーはオンプレミス環境から自社クラウド環境へのDB移行を支援するサービスを提供しています。今回はその中で最も先行しているAWSの「Schema Conversion Tool(SCT)」および「Data Migration Service(DMS)」について解説します。

 SCTを利用することでソースDB(移行元のDB)のスキーマをターゲットDB(移行先のDB)へ効率良くコピーできます。それだけではなく、SCTはスキーマやSQLをターゲットDB用に変換する機能を備えます。SCTを利用することで既存のスキーマやSQLを効率的に変換できます。DMSを利用すれば並列テーブルロードによる高速なデータ移行が可能です。オンライン移行機能は切り替え時のダウンタイム(移行作業の間システムを停止する時間)を最小限に抑えます。これらによりオンプレミス環境からクラウド環境へ効率的にDBを移行できます。SCTとDMSはどちらもGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)で提供されるため、直感的に利用できることも特徴です。

 ここでは初めにクラウド移行に必要な作業について整理し、SCTおよびDMSがそれぞれどの役割を担うか説明します。次にSCTとDMSの実際の使い方や使用する上で考慮しておきたい点について解説します。