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 クラウドサービスは目的に応じて適したサービスを利用するという考え方が取られており、多様なサービスを組み合わせてシステムのアーキテクチャーを設計します。デジタルトランスフォーメーション(DX)にはマーケティング、データ分析、AI(人工知能)の活用など複数の施策があり、システムの数が増えることになります。サービスやシステム間でデータを連係する必要性が高まり、DXを素早く成功に導くには、いかにデータ連係を効率的かつ高速に実装・変更できるかが重要になります。

アプリ統合サービスとしてのOIC

 米Oracle(オラクル)の「Oracle Integration Cloud Service(OIC)」は、アプリケーション間のデータ連係およびアプリケーションそのものをローコードで実装できるサービスです。データの変更操作を実装したい場合はJavaScriptで記述できます。変更しない場合はノーコードでデータ連係を実装できます。アプリケーションやSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)、クラウド上の各種サービスに接続するためのアダプターが前もって定義されており、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)による操作を中心にデータ連係を実装できます。

GUIの操作を中心にデータ連係を実装
GUIの操作を中心にデータ連係を実装
画像 OIC(Oracle Integration Cloud Service)の画面例
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 OICはオラクルのパブリック・クラウド・サービスである「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」上のサービスとして提供されています。オラクルが提供するSaaSやOCI内の各種サービスに加えて、主要なクラウドサービスやソフトウエアとの接続をサポートしています。多様なフォーマットのデータだけでなく、SaaSに対応するアダプターを用意している点が特徴的です。OICをハブとすることで、アプリケーション間のデータ連係を実装する際の生産性を高められる可能性があります。データ連係と同時にアプリケーションもローコードで実装できることから「アプリケーション統合」サービスと呼ばれます。

 OICの機能を利用するには、OCI上でOICインスタンスを作成します。OICはマネージドサービスになっており、ユーザーが基盤を運用する必要はありません。データ連係やアプリケーションの実装と管理に集中できます。

 ファイルサーバーを内蔵しているのもOICのユニークな点です。連係対象のアプリケーションやサービスからOIC内のファイルサーバーにデータを「PUT」できます。これによりファイル連係であれば双方向で連係できるようになっています。内蔵されたファイルサーバーに一時的にファイルを保存してから連係先に送付することも可能です。

 ただし、OICのファイルサーバーの容量は上限が500ギガバイトで拡張はできず、恒久的にファイルを蓄積する用途には向きません。連係データを蓄積・アーカイブするには、別途オブジェクトストレージかファイルサーバーのサービスを使うことになります。

Webベースで実装

 OICにはWebベースでデータ連係やアプリケーションを作成するためのエディターが用意されています。ドラッグ&ドロップでコンポーネントを組み合わせて、設定値を入れていくような操作をします。他のノーコード、ローコードの製品と同様にカスタマイズできる範囲には制限があるため、用途に合うかどうかの評価とデータ連係全体のアーキテクチャーを検討してからの利用をお勧めします。OCI環境には複雑なデータの変換機能を備えたETL(抽出・変換・書き出し)ツールに当たる「Oracle Data Integration Platform Cloud Service(DIPC)」が用意されています。用途に応じて選択や組み合わせを検討するのがよいでしょう。

 ローコードとはいえ、生産性を上げるには製品に慣れる必要があり、操作方法や仕様を理解するための学習コストがかかります。データ連係の実装には、組織内のデータおよびデータ構造、システム構成、JSON(JavaScript Object Notation)/CSVなどのフォーマットに対する理解も必要です。OICサービスの初期設定にはインフラの専門知識も不可欠となります。データ連係機能を作成し、デバッグするにあたっては接続定義への理解も必要で、ログを解析する場面も出てきます。現場では技術知識を持つユーザーが中心となって実装を担うでしょうが、体制としてインフラエンジニアのサポートが必要になることも考慮したほうがいいでしょう。