SUBARU(スバル)が車載半導体を含む部品不足や原材料価格の上昇などの逆風にさらされている。同社が2022年2月7日に発表した21年度第3四半期累計(21年4~12月)の連結決算によると、同期の世界販売台数は前年同期に比べて8万3000台減の54万8000台に落ち込んだ。
世界販売台数が前年実績割れとなった最大の要因は、部品不足による生産制約である。同期の世界生産台数は、前年同期比6万5000台減の54万9000台。21年度第3四半期累計のグローバルの減産台数は21万台となり、21年度上期(21年4~9月)より5万台増えた。
21年度第3四半期累計の業績は、前年同期に比べて減収減益だった。売上高は同3.2%減の2兆75億円、営業利益は同21.4%減の772億円である。世界販売台数の減少に加えて、原材料価格の上昇などが要因だ。鋼材やアルミニウム合金、樹脂、貴金属(エンジン後処理の触媒に使うロジウム)などの価格上昇は、21年度第3四半期累計で551億円の減益要因となった(図1)。
原材料価格に加えて、物流コストなども上昇している。電話会議システムを用いて22年2月7日に開催した会見で、スバル取締役専務執行役員で最高財務責任者(CFO)の水間克之氏は、「これらのコスト上昇には今後、車両価格の引き上げで対応していきたい」と明かした。
スバルの完成車の生産拠点は、日本(群馬製作所)と米国(SIA:Subaru of Indiana Automotive)の2箇所であり、生産車種は他の自動車メーカーより少ない。部品の共有化も進めてきた。こうした「集中と選択」の戦略はこれまで同社の成長を支えてきたが、部品不足が続く現状ではマイナスに作用した。
部品不足については21年度だけでなく、22年度(22年4月~23年3月)も続くとみているが、同日の会見で水間氏は「部品不足の解消に向けてサプライヤーとの協議を続けており、1台でも多くの車両を顧客に届けられるように全力を挙げる」と力を込めた。
部品不足の影響などによって、21年度通期(21年4月~22年3月)の世界販売台数は、前回計画(21年11月公表、以下同じ)に比べて9万台下方修正して74万台に設定した。一方、世界生産計画については公表を見送った。「前提となる数値は持っているが、変動する可能性が大きいため、現時点で公表は控える」(水間氏)とした。
21年度通期の業績も下方修正した。売上高は前回計画に比べて2000億円減の2兆7000億円、営業利益は同500億円減の1000億円を見込む。原材料価格の上昇などが前年度比で786億円、前回計画比で156億円の減益要因になる見通しである(図2)。