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 東芝インフラシステムズ(川崎市)は、作業者の健康状態を「見える化」する工業用途向けリストバンド型センサー「MULiSiTEN(マリシテン)MS100」をオートメーションと計測の技術展示会「IIFES 2022」(2022年1月26~28日、東京ビッグサイト)で披露した(図1)。自社が考案した指標である「暑さストレスレベル」を計測することで、夏季の屋外作業などの高温環境下で働く作業者の安全管理をサポートする。

図1 リストバンド型センサー
図1 リストバンド型センサー
作業者などの暑さによるストレスを計測できる。(出所:日経クロステック)
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 同製品には、温度から湿度、光学(脈拍用)、加速度(3軸)、角速度(ジャイロ3軸)までの5種類のセンサーを搭載した。周囲の温度と湿度に加えて、作業者の個別情報(脈拍や活動量、身長、体重など)を基に暑さストレスレベルを演算し、0~4の5段階で表示する。事前に設定したレベルに達すると、振動で作業者に伝える仕組みだ(図2)。

 特徴は、ストレス判断の精度の高さ。例えば、座った状態の作業と動き回る作業では、同じ温度や湿度でも体に感じる暑さストレスは大きく異なる。この違いを活動量や脈拍数などの情報から判断し、暑さストレスレベルの演算に反映させている。アルゴリズムの開発では、同社の作業者から集めたデータを活用することで精度を高めた。また、脈拍が異常を検知した際、体の異常なのか、装着のズレなのかを脈拍の波形から判断できるため、誤報率も下がる。

図2 装着した様子
図2 装着した様子
バンドは柔らかいゴム製で手首への密着感が高い。(出所:日経クロステック)
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 Bluetoothを使った無線通信にも対応しており、別途システムを導入すれば、作業者全員の健康状態や位置情報をリアルタイムに遠隔監視できる(図3)。従って、単独作業が必要な場合でも、作業者の異変の早期発見に役立つ。

図3 監視画面の例
図3 監視画面の例
今回の展示会用に同社が開発した監視システム。作業者全員の脈拍、暑さ指数などの状態を一覧表示できる。(出所:日経クロステック)
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 暑さを示す指標には、熱中症を予防することを目的とした「WBGT(湿球黒球温度)」があり、近年ではこれを基にイベントの開催可否を判断するなど普及が進んでいる。ところが、真夏の時期などは、WGBTが1日中「危険」を示す日が少なくない。これでは作業が進まない。そのため、「作業の進行を考慮して、休憩の判断を自己管理に頼っている現場も多い」(同社)が、これでは適切な暑さストレスを管理できない可能性がある。そこで、新しいリストバンド型センサーを使えば「データに基づく安全管理ができ、作業効率の向上も期待できる」(同社)という。導入価格は要相談。