独Beckhoff Automation(ベッコフ)は多品種少量生産の実現などに向けて、磁力を活用した搬送システム「XPlanar(エックスプラナー)」を提案する。磁気で浮上するトレー状の搬送機が平面上を自在に動く。ベルトコンベヤー式の生産ラインとは異なり、搬送ルートを柔軟に変えられる。日本では半導体や医薬品、自動車の各業界に向けて評価用キットの販売を進めている。
XPlanarは平板形状のタイル(固定子)と、その上を磁気浮上しながら高速移動するムーバー(可動子)から成る。タイルには多数のコイルと制御回路を、ムーバーには永久磁石を組み込んだ。移動の原理はリニアモーターと同じ。コイルに電流を流すと磁界が発生し、磁石を内蔵したムーバーは浮上しながらタイル上を滑るように移動する。パソコン上のソフトウエアで電流を流すコイルや電流の強さを制御し、ムーバーの動く方向や速さを変えている。
ムーバーはタイルから通常は2mm程度、最大で5mm浮上する。360度(°)回転することはもちろん、5°程度までの傾斜や、壁や天井に沿った移動も可能。スムーズかつ自在に動く様子から通称「空飛ぶ絨毯(じゅうたん)と呼ばれている」(同社担当者)という。
XPlanarの最大の利点について同社担当者は「搬送経路が固定されず、自在に動かせること」と話す。例えば、個々の部品や仕掛かり品を別の工程や生産設備などに運ぶといった柔軟な使い方ができるため、多品種少量生産にも使える。
ムーバーが常に浮いているため、搬送設備との摩耗で発生する異物も防げる。「半導体や医薬品など異物の混入を極力減らしたい業界のニーズに合致する」(同社担当者)と見込む。