政府が2050年のカーボンニュートラル達成を宣言してから早くも1年が経過した。製造業を含むあらゆる産業が達成に向けて動き出している。
しかし、あまりにも急な目標設定に対して、現場からは戸惑いの声も聞こえてくる。
積み上げてきた技術や実績を無視し、理想論を振りかざすだけでは立ち行かない。
脱炭素で注目の電気自動車や再生可能エネルギー、水素エネルギーについてあらためて課題を見つめ直す。

脱炭素への疑問
目次
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水素普及に必要な世界的な合意、日本に適した再エネ対策を
日本総合研究所 フェロー 井熊 均氏
「水素の普及には輸送法とスペックの国際的な共通化が必要。日本には、小規模分散型の再生可能エネルギー対策が有効ではないか」——。エネルギー問題に詳しい日本総合研究所フェローの井熊均氏は、こう訴える。国際的な再エネ活用の動きに呼応する重要性を認めながら、国土や自然環境に合った固有の再エネ対策が必要だと…
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EVバブルははじける、日本は都市レベルのエネルギー管理を打ち出せ
日本総合研究所 フェロー 井熊 均氏
「EVバブルはいずれはじける。日本は発達した公共交通機関などを活用し、都市単位でのエネルギーマネジメントに強みを見いだしていくべきだ」——。エネルギー問題に詳しい日本総合研究所フェローの井熊均氏は、こう訴える。
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「乾いた雑巾を絞れ」過熱する“脱炭素”に求められる冷静な視点
カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)はどこか腹落ちしない─。こう感じる人は少なくない。日経ものづくりが実施した脱炭素への疑問に関するアンケート調査に、485件もの自由意見が寄せられた。
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「ガソリン車からEVへ」だけが正解か、公共交通シフトも選択肢に
「電気自動車(EV)ありきで議論が進んでいるように思う」「あたかもEVがカーボンニュートラルの切り札のように世論が操作されていないか」─。日経ものづくりが2021年12月から22年1月にかけて実施した「EV・水素・再エネなど炭素中立の疑問点に関する調査」には、回答者からこんな意見が多数寄せられた。
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火力と原子力が残るワケ 日本の再エネ、狭い国土と安定供給に難
太陽光発電や風力発電をはじめとする再生可能エネルギー(再エネ)は、安全で二酸化炭素を排出しない電力として、脱炭素には欠かせない電源とされる。
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日豪間で液体水素を輸送 褐炭利用にコストとCO2フリーの高い壁
2022年1月20日、川崎重工業が建造した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」がオーストラリアに到着した。同船は21年12月末に神戸を出港。褐炭から製造した水素を現地で積み込み、22年2月下旬ごろ日本に戻る。「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」が世界で初めて取り組む、液化…
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「EVは過半に達しない」が7割超、再エネ比率目標達成にも懐疑的
数字で見る現場 EV・水素・再エネなど炭素中立の疑問点に関する調査
「電気自動車(EV)がガソリン車を代替する比率は過半に至らない」「2030年に再生可能エネルギーの割合を36~38%まで高める政府の目標は達成できない」と考える人がいずれも7割――。日経ものづくりが実施したアンケートから、現状の脱炭素の動きに対して懐疑的な見方をしている現場の様子が浮かび上がった。