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「水素の普及には輸送法とスペックの国際的な共通化が必要。日本には、小規模分散型の再生可能エネルギー対策が有効ではないか」——。エネルギー問題に詳しい日本総合研究所フェローの井熊均氏は、こう訴える。国際的な再エネ活用の動きに呼応する重要性を認めながら、国土や自然環境に合った固有の再エネ対策が必要だと訴える。(聞き手は斉藤壮司、高市清治)

日本総合研究所フェローの井熊均氏
日本総合研究所フェローの井熊均氏
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水素エネルギーは普及するでしょうか。

井熊氏:規模の大小はあっても、世界中で水素活用は検討されており、普及するのは間違いないでしょう。どの国にとっても、水素はエネルギーミックスのラストピースです。水力発電や風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)を導入し、原子力発電所を稼働させ、それでも埋められない部分を水素で補うはずです。

 そもそも水素は地球上に潤沢にあります。私たちの試算では、サハラ砂漠の10分の1の面積に太陽光発電パネルを敷き詰めて、水を電気分解して水素を取り出せば世界中のエネルギー需要を賄えます。地球上に降り注ぐ太陽エネルギーは人類が使っているエネルギーの約1万倍ある。水も無尽蔵に存在します。問題は製造や輸送のコストと輸送法、そして世界的コンセンサスを確立できるか否かです。

コストはいずれ下がる

水素を水などから取り出すコストが過大だという指摘があります。

井熊氏:コストはそれほど大きな壁ではないでしょう。技術が進歩して水素の利用が広がれば、そう遠くない時期に水素発電の単価は下がり、10円代/kWhを実現できるはずです。日本の再エネの固定価格買取制度(FIT)の単価は10〜20円/kWhのものが多いですから、それほど高くありません。

 例えば石油は過去に1バレル当たり100米ドル以上という時代もありました。他の再エネより高くなっても、必要性があれば投資資金を集めることができるでしょう。

取り出した水素をどのようにして輸送するかという課題もあります。

井熊氏:輸送法については、世界的に見ると純水素が主流になるのではないでしょうか。日本では石炭火力発電推進派が、石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出量を削減する手法として、アンモニアによるCO2の固定を推しています。そのためアンモニアによる水素の輸送が注目されていますが、アンモニア自体が危険物である上、グローバルに普及するか疑問が残ります。

 水素とCO2からメタンなどを合成する「メタネーション」も期待されていますが、変換効率を考えると不利です。世界的には純水素による輸送に落ち着く可能性が高いと私はみています。