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 「大型トラックのエンジンみたいだ」

 新型「MIRAI(ミライ)」の燃料電池(FC)スタックを含むフロントフレーム注1)が車両から下ろされた瞬間、分解に立ち会った全員がその巨大さに息をのんだ(図1)。FCスタックを含む部分は、高さが成人男性の背丈の半分ぐらいもある。

注1)フロントフレームには、サスペンションやステアリング用のギア、パワーステアリング用のモーターなどが搭載されていた。その上にFCスタックのブロックが積載されている形である。
図1 ミライの燃料電池(FC)スタックなどを積載したフロントフレーム
図1 ミライの燃料電池(FC)スタックなどを積載したフロントフレーム
(撮影:日経クロステック)
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 姿も異様だ。巨大なパイプがツタのように絡みつき、エンジン部品の機械的な感じはなくむしろ、軟体動物のような装いである。これまでの自動車の部品とは、明らかに異質である。

 ここからFCスタックを取り出すため、周辺にあるパイプや補器類を外していく作業に取りかかった。その結果、分かってきたのは次のような構造だ。

 FCスタック本体は、アルミニウム(Al)合金製の土台(ベースプレート)の上に搭載されており、このベースプレートの上のみならず、裏側にもFCスタックを動作させるための補器類が所狭しと取り付けられている(図2)。このベースプレートは、フロントフレームと接合部としての役割も担う。フロントフレームとベースプレートは、ダンパーを介して、ボルト締結されていた(図3)。

図2 フロントフレームから取り外したFCスタックのブロック
図2 フロントフレームから取り外したFCスタックのブロック
FCスタックの上面と下面に、びっしりと補器類が取り付けられている。(撮影:日経クロステック)
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図3 FCスタックのブロックを積載していたフロントフレーム
図3 FCスタックのブロックを積載していたフロントフレーム
(撮影:日経クロステック)
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 ベースプレートで一体化されたブロックには、FCスタックのみならず、それを動作させるために必要な補器類が、過不足なく載っていた。製造過程において、この塊ごと動作チェックすることで、作業を簡略化してコスト低減を図っているとみられる。

 補器類やFCスタックとつながるパイプを外すと、FCスタック部が現れた(図4)。この状態の外観やサイズ感は、むしろ乗用車のエンジンに近い。つまり、FCシステムは、FCを動作させるための補器類やパイプによって巨大化していたのだ。

図4 補器類を取り外して現れたFCスタック部
図4 補器類を取り外して現れたFCスタック部
このFCスタック部には、FCスタック(下)に加え、FCスタックで発電した300V程度の電圧を650Vに昇圧するコンバーター(上)などが搭載されている。(撮影:加藤 康)
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