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 トヨタ自動車が、車載Ethernet(イーサネット)を本格採用した。同社の「MIRAI(ミライ)」を分解調査して分かった。同社が推進する“ソフトウエアファースト(ソフト第一)”の方針と相性がよく、従来の車載LANであるCAN(Controller Area Network)からの移行を進めるきっかけになりそうだ。

 ミライの車載ネットワークで車載Ethernetを適用したのは、高度運転支援技術「Advanced Drive(アドバンストドライブ)」(以下、AD)に関わる領域である(図1)。OTA(Over The Air)に対応したECU(電子制御ユニット)はすべて、車載Ethernetでつながる。ネットワークのトポロジーを簡素化するため、2個のEthernetスイッチングハブを配備したことも判明した(図2)。

図1 ミライの車載ネットワーク
図1 ミライの車載ネットワーク
高度運転支援技術「Advanced Drive」に関わる部分に車載Ethernetを採用した。図は、トヨタ自動車のサービスマニュアルを基に日経クロステックが作製。
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図2 車載Ethernetのスイッチングハブ
図2 車載Ethernetのスイッチングハブ
ミライには、同じものを2個搭載していた。OTAに対応したECUと同様にデンソー製である。(撮影:日経クロステック)
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車載Ethernetでは日産が先行

 車載Ethernetは、自動車内のECUや電装品同士をつなぐ車載ネットワーク技術である。IT分野のEthernetをベースに、車載用ハーネスに使われる2ペアケーブルでの伝送、リアルタイム性やフェイルセーフの確保など、自動車で求められる機能に対応している。

 車載EthernetはCANに比べて、データ伝送速度が高速、車載ネットワークを簡素化しやすい、IP(インターネットプロトコル)ベースでデータをやり取りできるのでITの技術を採用しやすい、クラウド側との連携がより容易になる、といった利点がある。

 トヨタが車載Ethernetの採用で見据えるのが、「走るスマホ」の世界観だ。スマートフォンのように発売後にOTAでソフト更新して、自動運転/先進運転支援システム(ADAS)の機能向上や新サービスの提供といった価値を提供していく。

 日本の自動車メーカーのなかで車載Ethernetの採用で先行したのは日産自動車だった。同社は2019年に発売した「スカイライン」の手放し運転できる運転支援機能「プロパイロット2.0」で、車載Ethernetを採用したとされる。高精度地図データの伝送に車載Ethernetを用いたもよう。データ量が大きく、高速な車載Ethernetの採用に踏み切った。

 一方のトヨタは、ミライおよび同時期に発売したAD搭載の「レクサスLS」で、より広範囲に車載Ethernetを適用した。OTA対応のECU4個のほかに、車載通信機のDCM(Data Communication Module)や前方監視用LiDAR(レーザーレーダー)などが車載Ethernetの通信網でつながる。今後投入される新しいECUについては、車載Ethernetが標準になってくるとみられる。