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LIBの循環経路に3つの“R”

 車載向け蓄電池などの当初の役割を終えたリチウム(Li)イオン2次電池(退役LIB)を回収して再度活用する事業は、大きく3つの“R"に分けられる(図1)。(i)車載用電池パックをそのまま定置型蓄電池などの別の用途に使う“リパーパス(Repurpose)”、(ii)電池パックを分解してセルを選別し、それを再度電池パックに使う“リユース(Reuse)”、(iii)電池を材料にまで分解し、新規の電池製造に利用する“リサイクル(Recycle)”である注1)

図1 電池の“静脈”事業に新技術が続々登場
図1 電池の“静脈”事業に新技術が続々登場
リパーパス(電池パックまるごとの2次利用)、リユース(状態の良いセルの再利用)、リサイクル(資源の再利用)という大きく3つある退役LIBの資源循環の経路を示した。循環の経路が短いものほど、CO2排出量が少ない。ただし、2次利用は性能が劣化した電池もしばらく使ってしまい、資源の有効活用という点で課題がある。また、リユースは電池パックの分解や選別のコストが大きいという課題がある。(図:プライムプラネットエナジー&ソリューションズの図を基に、日経クロステックが作成)
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注1)従来は“3つのR”といえば、Reuse、Recycle、そしてReduceだった。Reduceは利用量、または廃棄物を減らしたり省エネルギー(化石燃料の使用量削減)を図ったりすることを指す。ただ、廃棄物を減らす効果はReuseやRecycleにもある。また、特に再生可能エネルギーの導入が進む地域では、電力が余るケースが多く、省エネルギーの意義は薄れている。

 このうちリパーパスは、単に「2次利用」とも呼ばれるが、実は比較的新しい退役LIBの使い方である。電池パックの分解などをしないために追加コストが非常に低いという利点がある一方で、最近までは性能が劣化した電池セルを含む電池パックをそのまま使うのは、定置型蓄電池といえども合理的でないと考えられていたからだ。具体的には、性能が劣化した電池パックは内部のセルの容量や電気抵抗値に大きなバラつきがあり、特に電圧や電流が異常値になったセルや電池パックがあると、それが他のセルや電池パックにも悪影響を及ぼしかねない。それが“新旧の電池を混ぜて使ってはいけない”理由でもある。

 ただ、最近は電池の制御を工夫することで、リパーパスも“禁忌”の使い方ではなくなってきた。

異常なモジュールは即座にオフ

 このリパーパス事業の展開に積極的なのが伊藤忠商事や丸紅といった日本の商社である。伊藤忠商事は中国の企業と提携し、その企業経由で回収した電動バス向け電池モジュールを用いた定置型蓄電池システム「Bluestorage」を開発した(図2注2)。国内初号機は山口県で稼働させたとする。「電池モジュールの診断と選別は提携企業がするが、そこからAグレードのものを供給してもらっている」(伊藤忠商事)。

(a)バス搭載の電池モジュールのイメージ
(a)バス搭載の電池モジュールのイメージ
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(b)(a)をコンテナに実装した様子
(b)(a)をコンテナに実装した様子
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(c)山口県に設置した国内初号機
(c)山口県に設置した国内初号機
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(d)モジュールは常時モニターし異常があれば切り離す
(d)モジュールは常時モニターし異常があれば切り離す
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図2 伊藤忠商事が中国の電池の2次利用事業
伊藤忠商事が2021年に始めた、中国の提携企業経由で回収したLIBのモジュールを定置型蓄電池として2次利用する「Bluestorage」事業。主に中国でバスなどに用いていたLIBモジュールを中国Shenzhen Pandpowerが回収、選別して利用している(a)。1コンテナの容量は最大1MWh(b、c)。山口県で実運用も始めた。蓄電池はモジュール単位で性能をモニターし、異常が出たらその系列の利用をやめる(d)。(写真や図:伊藤忠商事)
注2)日経クロステックの推定で、使っている電池モジュールは中国BYD製だとみられる。

 同社は、電池性能の劣化やバラつきの影響を回避する工夫として、電池モジュールの状態を常時モニターし、特に劣化具合が大きいモジュールがある場合はそれを接続した系列ごとオフにしてシステム全体に影響しないようにした点を挙げる(図2(d))。