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リチウムイオン2次電池のリサイクルの事業規模がいきなり数十倍に

 リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)のリサイクル事業については、1~2年前まではベルギーUmicoreの、当初の役割を終えたLIB(退役LIB)を年間7000トン処理するという事業規模が目立つ程度だった。ところが、最近参入、あるいは事業規模を発表した事業者は規模が2桁違う(表1)。例えば、米Tesla(テスラ)の元CTOが設立した米Redwood Materialsは、20億米ドル(1米ドル=115円で2300億円)を投じて2025年までに年間100GWh(約50万トン)規模の処理工場の稼働を計画する。現時点で少なくとも上位6社までは2025年前後に退役LIBを年間10万トン規模で処理する計画である。

表1 大規模なリサイクル計画を進める事業者が続々
公開情報を基に、日経クロステックが作成した。
表1 大規模なリサイクル計画を進める事業者が続々
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 参入事業者の“本業"は多岐にわたる。日用品のリサイクル事業者、LIBメーカー、化学メーカー、そして鉄鋼事業から最近、LIBの正極材料の製造に手を広げたばかり、という韓国POSCOのような企業もいる。Niの鉱石を製錬、精製するような「非鉄金属」と呼ばれるメーカーも参入しつつある。中には、スイスGlencoreや中国Huayou Cobalt(華友)といった世界のコバルト(Co)資源の取引を牛耳る企業も含まれている。このリサイクル事業で他社に先行を許せば、いずれは鉱山由来のCoへの需要がなくなるといった危機感があるのかもしれない。

ギガファクトリーを次々に青田買い

 もちろん、事業の投資規模や計画の規模だけ大きくても、退役LIBをその分確保できなければ、LIBの確保に苦しんだ4Rエナジーの轍(てつ)を踏むことになる。しかし、世界と日本ではEVを巡る事情が大きく異なる。まず、EVの販売台数が日本メーカーのそれとは桁が違う点だ。2020年のEV売り上げ1位はTeslaで約50万台。一方、マークラインズ調べで日本のメーカートップは日産自動車で約6万台、世界では7位である。トヨタ自動車は1万台に満たず、同41位に沈む。現在の日本の自動車メーカーの退役LIBだけをみていては状況を見誤るのである。

 しかも、今から他の自動車メーカーなど電池の確保先を探すようでは既に遅いかもしれない。新規参入したリサイクル事業者の多くは、次々とそれらの巨大工場計画を持つ電池メーカーと提携し、工場ができる前に電光石火のスピードで退役LIBの“青田買い"を済ませてしまった(図1)。スウェーデンNorthvoltのように、電池メーカー自らが大規模なLIBのリサイクル事業を始める例や、提携した電池メーカーの巨大工場に自らのリサイクル工場を併設するベンチャー企業も少なくない。

(a)スウェーデンNorthvolt
(a)スウェーデンNorthvolt
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(b)米Ascend Elements
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(c)米UltiumとカナダLi-Cycle Holdings
(c)米UltiumとカナダLi-Cycle Holdings
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(d)ドイツPrimobius
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図1 提携先の電池メーカーの大型工場に併設するケースが続々
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図1 提携先の電池メーカーの大型工場に併設するケースが続々
LIBの大規模リサイクル事業を計画する海外企業の蓄電池工場またはリサイクル工場の様子。Northvoltはスウェーデン北部のLIB製造工場「Northvolt Ett」に隣接する形でリサイクル工場「Revolt Ett」を建設予定(a)。Ascend Elementsは現時点で米国最大級のLIBのリサイクル工場を建設した(b)。稼働は2022年8月という。カナダLi-Cycle Holdingsは電池メーカーの米Ultiumと提携し、Ultiumの電池工場に電池の破砕工場を併設する計画(c)。Primobiusはドイツにリサイクル工場を多数建設する計画(d)。米Redwood Materialsが建設を予定するリサイクル工場のイメージ(e)。(写真:(a)はNorthvolt、(b)はAscend Elements、(c)はLi-Cycle Holdings、(d)はPrimobius、(e)Redwood Materials)