全3630文字

 これまでは収益性の確保が難しかったリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)のリサイクル(再資源化)技術が急速に進化し、本格的な事業化が可能になりつつある。それを実現する技術の方向性は大きく3つある(図1)。

(1)できるだけ低コストかつ低温で処理し、二酸化炭素(CO2)排出量を減らす、(2)できるだけ構造を壊さずに分解して元の部材を生かす、(3)これまでのニッケル(Ni)やコバルト(Co)だけの回収から、Liを含むほとんどの金属、そして黒鉛や樹脂類なども回収する、という方向である。

 具体的な手法としては、LIBを破砕して得られる正負極材料が混合した塊や粉(ブラックマス)から各種元素を取り出す方法として従来一般的だった「乾式製錬」から「湿式製錬」、さらにはその先の「ダイレクトリサイクル」へと大きく変わりつつある。

図1 より低コスト、低CO<sub>2</sub>、多元素の回収、再生を実現へ
図1 より低コスト、低CO2、多元素の回収、再生を実現へ
LIBリサイクル工程における典型的生成物(a)と今後の技術のトレンド(b)。従来の工程そのままでは経済性が成り立たず、CO2排出量も大きくは減らず、回収できるのはNiやCoだけだった。今後は、リサイクル技術が大幅に見直され、できるだけ低温プロセスかつ電池や材料をできるだけ壊さないプロセスで、低コスト、低CO2を目指す。さらに、CuやAl、Li、黒鉛、Mn、さらにはバインダーに使われている樹脂の回収も進める。(写真:スウェーデンNorthvolt、図:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]