2021年に供給不足で木材価格が暴騰した「ウッドショック」以来、鋼材や生コンクリート、燃料や内装材などあらゆる資材の価格高騰が建設現場や設計者を悩ませる。高騰の背後にあるのは、建材ごとに異なる供給網だ。新連載「建設資材高騰のカラクリ」では建設資材の価格動向と供給プロセスを深掘りし、素材会社や部材メーカー、工務店などが取り組む改革事例を追う。連載初回はウッドショックのその後を追いかける。
ウッドショックの震源地は米国だった。新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの浸透と住宅ローンの歴史的低金利を背景に住宅着工戸数が急増したことが発端。日本国内では輸入木材の代替需要が増し、国産材価格も急上昇した。
21年夏以降、上昇は鈍化したものの依然として木材価格は高水準にある。今なおウッドショックは終わっていない。その真因を分析するには木材のサプライチェーン(供給網)を理解する必要がある。網の目状に広がった木材の複雑な供給網が、価格決定メカニズムを複雑にしているからだ。
まずは供給網を見てみよう。山で伐採した木が建物になるまでの段階は、大きく4つに分かれる。(1)森林から原木を伐採して丸太にする、(2)板や角材といった製材、集成材や合板などの木質原料にする、(3)用途に合わせて建築部材に加工する、(4)建築部材を組み立てる──の4段階だ。
各段階を商社や問屋、販売店などの中間流通業者がつなぐ。同じ段階でも製材工場と木質原料工場などに分かれていて、それらの間に中間流通業者が介在することもある。中間流通業者の数が10社を超えることも少なくない。上図では便宜上、矢印で供給網を簡略化したが、材種や形状などで矢印は複雑に絡み合い、網目を形成している。
国産材の加工・流通事業を手掛ける西粟倉・森の学校(岡山県西粟倉村)で流通部長を務める西岡太史氏はこう話す。「戦後間もない頃までは木材の供給網に中間流通業者が介在することは少なく、山で伐採した原木を近くで製材し、そのまま大工が施工していた。ところが1960年代から安価な輸入材が流通し始め、それに対抗するため国産材の大量生産によるコストダウンが進んだ。木材加工は分業化し、その間を縫うように多くの中間流通業者が介入するようになった」