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 面積ベースで世界の約2割の森林を有する森林大国ロシア。同国のウクライナ侵攻を受け、木材の供給減少が日本国内における木材需給バランスに影響を与えかねないとの危惧が木材関係者の間で広がってきた。国際的な資金決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの大手銀行が排除されたことや、EUがベラルーシからの木材輸入を制限したことなどによって、欧州で木材需給が逼迫する恐れが出てきたからだ。

 欧州から日本への輸出量が減れば、21年に発生した木材高騰「ウッドショック」と同じ構図になる。ロシアに端を発する第2次ウッドショックの懸念が高まってきた。

EUは2022年3月2日、ロシアのウクライナ侵攻に関与したとして、ベラルーシに対して木材などの輸出を制限すると発表した(資料:EU)
EUは2022年3月2日、ロシアのウクライナ侵攻に関与したとして、ベラルーシに対して木材などの輸出を制限すると発表した(資料:EU)
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ロシア産は全て「紛争木材」に

 国内へのロシア輸入材にも不安が高まっている。合板大手セイホク(東京・文京)の遠山雅美常務は、取材した3月10日時点で次のように話した。「商社に確認したところ、直近で入ってくるロシア産材で問題は起こっていない。しかし森林認証の一時停止が時間差で影響する可能性がある」

 森林認証は森林経営の持続性や環境の保全に配慮した木材を表示管理する仕組みだ。森林管理に関する「FM認証」と製造・加工・流通に関する「CoC認証」の2つで構成される。FM認証を取得した森林所有者などの森林から伐採した木材を、CoC認証を取得した素材生産者や製材メーカー、中間流通業者などが管理する。

 22年3月上旬、国際的な森林認証である「PEFC認証」と「FSC認証」が相次いで、ロシア産とベラルーシ産の木材への認証を一時的に停止すると発表した。PEFC理事会のエドゥアルド・ロハス・ブレアレス議長は、「ロシアおよびベラルーシを起源とする木材を全て『紛争木材』と解釈する」とする声明を発表した。

PEFCのホームページにも「ロシア産とベラルーシ産の木材を『紛争木材』とする」と書かれている(資料:PEFC)
PEFCのホームページにも「ロシア産とベラルーシ産の木材を『紛争木材』とする」と書かれている(資料:PEFC)
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PEFC理事会のエドゥアルド・ロハス・ブレアレス議長は、ロシア産とベラルーシ産の木材を米国東部時間の2022年3月2日から半年間、森林認証しないと発表した(資料:SGEC/PEFCジャパン)
PEFC理事会のエドゥアルド・ロハス・ブレアレス議長は、ロシア産とベラルーシ産の木材を米国東部時間の2022年3月2日から半年間、森林認証しないと発表した(資料:SGEC/PEFCジャパン)
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 PEFCによる「紛争木材」の定義は以下の通りだ。「武装集団、あるいは、武力紛争に関与する文民政権またはその代表者によって取引された木材であり、その目的が紛争の永続化または個人的な利益のために紛争状態を利用することにある場合」。紛争木材は森林認証されず、PEFC認証を受けた製品全てに使用できないことになる。

 PEFC認証の場合、ロシアとベラルーシの両国の認証面積は世界のPEFC認証面積の12.5%に相当する約4100万haと非常に大きい(21年12月末時点)。同時点で、ロシア国内の104社とベラルーシ国内の110社がPEFCのCoC認証を受けている。森林認証の取り組みは世界的に進んでおり、日本でも大手企業を中心に木材供給網を構成する各社が森林認証を取得している。認証材をすぐに別の認証材に代替するのは難しいとみられる。

 ロシア側にも輸出規制の動きがある。ウクライナ侵攻による経済制裁への対抗としてロシア政府は22年3月10日、通信機器や鉄道車両など200品目以上の輸出を22年末まで禁止すると発表した。さらに、日本を含む非友好国に対しては一部の木材や木材製品の輸出も停止するとした。対象となるのは、チップ状の木材(輸出品物の関税番号であるHSコード4401.21および4401.22)、粗木材(同44.03)、化粧張り用単板や合板用単板など(同44.08)だ。

 では、ロシアから日本への木材供給が完全にストップした場合、具体的にどのような影響が出るのか。