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 「例えば肝臓の形状や内部の血管を3Dにして解析するという使い方は既に医療業界で広がっている。一方で手術前に、手術の緻密なシミュレーションをしておきたいというニーズはこれから広がっていくと考えている」。コニカミノルタのヘルスケア事業本部開発企画部画像処理グループに所属する竹村知晃氏は、医療業界におけるデジタルツインを活用したシミュレーションの展望についてこう語る。

 コニカミノルタは内視鏡を用いた脊椎の切削手術を仮想空間でシミュレーションするデジタルツインのアプリケーション「Plissimo XV」を2018年から提供している。同アプリケーションは患者が医療機関で撮影した実際のコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)の画像を読み込んで仮想空間に3次元で描画する機能を備える。骨を対象とした脊椎内視鏡手術のシミュレーションや、肝臓などの軟組織臓器に対する切除・変形シミュレーションの機能も提供している。

 脊椎そのものに加えて、手術で使う内視鏡視点の画像やドリルなどの治具も仮想空間に描画し、仮想空間で脊椎のモデルに対する切削シミュレーションができる。仮想空間では切削した脊椎は変形し、例えば切削のたび脊椎内部の神経がどの程度見えるようになるかを確認できる。

患者ごとのシミュレーションが可能

 Plissimo XVの用途である脊椎内視鏡手術では、患者の皮膚を切開して内視鏡やドリルを通す。作成した切開部に「レトラクター」と呼ばれる金属の筒を挿入し、レトラクターの中を通して内視鏡やドリルを体内の標的部位に到達させる。切開するサイズやレトラクターの直径は様々だが、一例として患者の皮膚を直径約17ミリ切開し、直径約16ミリのレトラクターを通すなどする。内視鏡手術は患者にとって負担が比較的小さい半面、「術者にとっては技術の熟練に時間を要する」(竹村氏)。

 患者の体内で内視鏡を操作すると、術者は見ている方向が分からなくなることがあるという。加えて竹村氏は「レトラクターのため内視鏡で観察できる視野が限られる。その中で対象の骨を見つけ、切削するのは難しい」と話す。特に脊椎は同じような形の骨が並んでいるため「脊椎の部位誤認や方向感覚の喪失を防ぐため、手術前に3次元画像で確認したいとのニーズがあった」(同)。

 そこでPlissimo XVはレトラクター内の内視鏡から見える視野を再現する。具体的には、円筒状の視野に一部に影をつけることで、現実の手術でレトラクターによって遮られる視野を表す。

Plissimo XVの画面例。内視鏡から見える視野を丸で表現してあり、レトラクターで遮られる範囲には青い影がついている
Plissimo XVの画面例。内視鏡から見える視野を丸で表現してあり、レトラクターで遮られる範囲には青い影がついている
(出所:コニカミノルタ)
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