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 日本のコンピューター史に、また1つピリオドが増える。富士通がメインフレームとUNIXサーバーの事業からの撤退を決めた。事業を始めて60数年。国内市場の縮小にクラウドの台頭、デジタル変革への対応と、激変した事業環境を前にした決断だ。同社はクラウド事業に経営資源を集中する方針だが、行く手は険しい。

 「社会課題解決と新たな価値を創出できるコネクテッドな社会を実現するデジタルインフラ基盤の提供について」。2022年2月14日、富士通のWebサイトにこんな文書がひっそりと掲載された。一見すると新サービスの発表と見まがうこの文書こそが、富士通がメインフレームとUNIXサーバーの撤退について触れた公式声明だ。

富士通が公開した声明文
富士通が公開した声明文
ページ中ほどにメインフレームとUNIXサーバーの事業終了についての記載がある(出所:富士通)
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 サステナブル(持続可能)、レジリエント(強じん)、セキュリティー、データの信ぴょう性――。声明では富士通が目指す新たなITインフラを象徴する言葉が並ぶ。それを実現する一環として、メインフレームやUNIXサーバーの「クラウドシフト」に取り組むとする。

2030年度にメインフレーム販売を終了

 富士通が60年あまりに及ぶメインフレーム事業にピリオドを打つ。メインフレーム「GS21シリーズ」の製造と販売を終えるのは2030年度。その後も2035年まで既存顧客向けの保守を続ける。製造・販売を終えるまでに、2024年度にもプロセッサーなどを強化したメインフレームの新モデルを発売する計画だ。

 UNIXサーバー「SPARC M12」については、2029年度下期に製造と販売を終える。同じく保守を5年間続けて、2034年度に事業を終える。この間、インターフェースや消費電力の環境規制への準拠をはじめとする規格更新版モデルを少なくとも1回は販売する。

 事業の完全撤退まで10年以上の期間を残して公表した理由について、富士通関係者は「顧客企業が新たな環境に移行するための検討期間をしっかりとるため」と明かす。一般にメインフレームで構築・運用する基幹システムを刷新する間隔は7~10年とされる。ほとんどの顧客企業が、少なくとも次の刷新までに移行先のインフラを決める時間を確保できるとみられる。

日本コンピューター史の一翼を担う

 富士通のメインフレーム事業の歴史は、その多くが日本のコンピューター史に重なる。同社が量産型大型メインフレームと銘打ち、初代機「FACOM 230シリーズ」を発売したのは1964年に遡る。同シリーズの最小型機は5年間で1000台を受注し、当時としての国産ベストセラー機種になったという。

富士通が1964年に発売した量産型大型メインフレーム「FACOM 230」
富士通が1964年に発売した量産型大型メインフレーム「FACOM 230」
(出所:富士通)
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 1968年には第一銀行(現みずほ銀行)にオンライン預金システムを納入。幅広い企業が利用できる「経済的」(富士通)なコンピューターを目指したオフコン「FACOM V0」、日立製作所と共同開発した大型メインフレーム「FACOM Mシリーズ」などを次々に発売し、日本企業の電算化を支えた。

富士通が日立製作所と共同開発した大型メインフレーム「FACOM Mシリーズ」
富士通が日立製作所と共同開発した大型メインフレーム「FACOM Mシリーズ」
(出所:富士通)
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