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 英語から日本語に翻訳してくれる無料のWebサービスはかつて、「使い物にならない」と言われた。日本語としておかしい、誤訳などが当たり前だったからだ。しかし、2022年2月時点で提供されているサービスの多くは、短い文章はもちろん、長文でも手を加えずにそのまま理解できるレベルに向上した。

 「世界一高精度な翻訳ツール」と公言している2020年に日本語対応したドイツDeepLの「DeepL翻訳ツール」や、米Google(グーグル)の「Google翻訳」が有名だ。このほか、GRASグループの「Weblio翻訳」やエキサイトの「エキサイト翻訳」など、さまざまな無料翻訳サービスがある。

 DeepL翻訳ツールとGoogle翻訳に難易度の高い英文を取り込んだとき、流ちょうな日本語で翻訳してくれるだろうか。実際の翻訳結果からその実力を見ていこう。

英検1級・準1級レベルの英文を使う

 テストには、日本英語検定協会(英検)のWebサイトで公開している英文を使用した。英検では、英語学習ツールとしてレベルに合わせたポッドキャストを公開している。今回は難易度の高い英文として、「英検1級・準1級向け」のポッドキャスト(https://www.eiken.or.jp/eikentimes/listen3/)で公開していた「第10回(最終回)公正な取引?」の英文の一部をDeepL翻訳ツールとGoogle翻訳に取り込ませた。

英検1級・準1級向けの英語学習サイト
英検1級・準1級向けの英語学習サイト
(出所:日本英語検定協会)

 取り込んだ英文は以下である。

When consumers in wealthy countries purchase products certified by the Fairtrade Foundation, they pay a small premium. The foundation requires producer organizations in developing countries to use profits from the premium to improve the conditions and rights of their growers and workers.

 英検による英文の日本語訳は以下である。

富める国の消費者は、フェアトレード財団によって証明された生産物を買うとき少額の割増料金を払う。財団は、割増金からの利益を、生産組織の栽培者と労働者の条件や権利の改善向上のために使うことを、開発途上国の生産組織に要求をする。

 日本語で読んでも難しそうな文章だが、翻訳サービスがどのように訳してくれるのだろうか。まずはDeepL翻訳ツールの翻訳結果を見てみよう。

裕福な国の消費者がフェアトレード財団の認証を受けた商品を購入する際、少額のプレミアムを支払います。フェアトレード財団は、途上国の生産者団体に対し、プレミアムから得られる利益を生産者や労働者の条件や権利の改善に使うよう求めています。

 個人的な感想だが、ほぼ完璧ではないだろうか。趣旨は合っているし、平易な文章だ。「ですます」になっているせいか、英検の日本語訳より読みやすく感じる人もいるだろう。

 次にGoogle翻訳での翻訳結果を見てみよう。

裕福な国の消費者がフェアトレード財団によって認定された製品を購入するとき、彼らは少額の保険料を支払います。財団は、発展途上国の生産者組織が彼らの生産者と労働者の状態と権利を改善するために保険料からの利益を使うことを要求します。

 こちらの結果もかなり高い精度のように思う。

 DeepL翻訳ツールとGoogle翻訳の目立った違いとしては、「small premium」の訳だろう。DeepL翻訳ツールでは「少額のプレミアム」と訳し、Google翻訳では「少額の保険料」と訳した。英検の日本語訳では「少額の割増料金」となっている。個人的には「プレミアム」のほうが理解しやすい気がする。ただ大きな差ではない。

 ビジネスシーンにおいて、翻訳サービスの結果をそのまま使うことはないだろう。このような用語については、結果を利用するときに適切なものに置き換えればよい。内容を理解することが目的であれば、どちらの翻訳結果でも十分すぎるレベルだろう。