遠隔診療など医療のオンライン活用が日本でようやく実質的なスタートラインに立つ。厚生労働省は2022年1月に指針を改め、再診からしか許していなかったオンライン診療を初診から利用できるようにするなど、医師の診療と薬剤師による服薬指導におけるリモート技術活用への制限を大きく撤廃した。2022年4月から実施され恒久的な制度となる。
対面や現地常駐などを業法で義務付け、デジタル技術の活用を阻む「アナログ規制」は特に医療分野で根強く残る。例えばオンラインで診療できるのは30分程度で通院か訪問できる患者に限るなど、リモート活用にわざわざ「距離」の制約をかけてきた。2022年4月以降、オンライン診療ではこれらのアナログ規制の多くは廃止される。
ただ2022年は出発点にすぎない。コロナ特例で後押ししても2020年以降のオンライン診療の利用率は6%以下と低調で推移してきた。処方薬の服薬指導はオンラインが解禁されても、現状では薬剤師がテレワークで働けないなど、使い勝手を悪くするアナログ規制がまだ残っている。改革の経過と普及に向けて残された課題を追った。
オンライン診療の診療報酬を引き上げ、患者負担も軽減か
「制度の見直しは業界が希望する水準にかなり近づいた。これからはシステムベンダーと医療業界がどう普及させていけるかという現場の課題になった」。オンライン診療システム大手の1社であるメドレーは、2022年4月からのオンライン診療の制度改定を高く評価する。
オンライン診療は2015年に「離島やへき地以外でも利用できる」と厚労省が見解を示したことで、全国で解禁された。しかし厚労省の指針ではオンライン診療はあくまで対面診療の補助的手段との位置付けであり、距離や利用頻度、金額など様々な制約があった。
2020年4月に初診からのオンライン診療を解禁した「コロナ特例」(感染が収束するまでの時限的な措置)をきっかけに、政府がコロナ後を見据えて、制度見直しの議論を進めたことがオンライン診療を促進する制度見直しに結び付いた。