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 2022年4月から医師によるオンライン診療と薬剤師によるオンライン服薬指導が全面的に解禁される。しかしこれらの医療デジタル化に取り残され、対面などを強いる「アナログ規制」が立ちはだかる分野がある。市販薬販売である。

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 コンビニエンスストアや一部ディスカウントストアなど医薬品販売に参入する流通業は増えているが、店舗数は大手コンビニの場合で加盟店の2%未満と大幅に増えたわけではない。店舗での市販薬販売には、客の相談に応じる薬剤師やリスクが低い第2類と第3類の市販薬を扱える登録販売者に対面接客や一定の常駐を義務付ける規制があるからだ。

登録販売者が常駐して市販薬を置くローソンの店舗の例。登録販売者が不在の時間は棚のシャッターを閉めて販売できないよう管理している
登録販売者が常駐して市販薬を置くローソンの店舗の例。登録販売者が不在の時間は棚のシャッターを閉めて販売できないよう管理している
(出所:ローソン)
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 冒頭で示したように、市販薬よりもリスクが高い処方薬でさえ、安全性などの課題を整理してオンラインによる服薬指導の解禁が決まった。市販薬の店頭販売でオンラインによる相談を解禁しない理由は見いだしにくくなっている。

 これについてはアナログ規制の見直しを担当する政府の規制改革推進会議も課題であると認識している。所管する厚生労働省に対して規制の見直しを求め、2022年3月中にも議論を本格化させる考えだ。

 ただしドラッグストアといった医薬品販売業者の一部は反対しており、産業界ではコンビニ業者と対立する構図になっている。政府は利用者の利便性を重視し流通業者の創意工夫を尊重した議論を進められるか。

常駐は撤廃、対面規制は変わらず

 長い間、市販薬販売は「常駐」と「対面」という2つの規制に縛られていた。1つ目の常駐とは、店舗の営業時間のうち半分以上の時間で薬剤師や登録販売者が常駐することを義務付ける規制で、「2分の1ルール」と呼ばれる。2つ目の対面とは、客からの相談を対面に限るという規制だ。医薬品のインターネット販売ではオンラインでの相談が認められているにもかかわらず、店舗販売は規制され続けてきた。

 このうち2分の1ルールは2021年8月に撤廃された。きっかけは2020年10月から始まった規制改革推進会議のワーキンググループ(WG)の議論で、同ルールの必要性を訴える厚労省に対して河野太郎前規制改革相が異を唱えたことだ。

 「そんな説得力のない説明はだめだよ。(安全性などのために)半分の時間は常駐することが必要だというのは厚労省の思い込みだ」。河野前規制改革相がこう断じると、政府は2021年6月に閣議決定した規制改革実施計画に同ルールの見直しを盛り込み、同年8月には撤廃した。

 しかし同ルール撤廃の効果は必ずしも出ているとは言えない。コンビニ業界ではローソンがチェーン店1万4600店強のうち、約280店舗で市販薬を販売している(2022年2月時点)。コンビニ大手の中では最も店舗数が多いとみられるが、それでも1万4000店強あるローソン全店舗の2%弱にすぎない。

 同社の新規ソリューション推進プロジェクトの担当者は「2分の1ルール撤廃後も店舗数は大きくは伸びていない」と話す。もう1つのアナログ規制である対面規制が残るため、店舗を増やすには登録販売者を各店舗に置く必要があるからだ。