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 KDDI(au)の3Gサービス終了を目前に控え、3G全盛期にケータイ開発の中心を担ったKDDI 5G・xRサービス戦略部エキスパートの砂原哲さんとKDDIパーソナル企画統括本部プロダクト企画部企画1Gマネージャーの近藤隆行さんに当時を振り返ってもらうインタビュー。後編は、端末不況とスマホの登場によって日本のフィーチャーフォン(ガラケー)が曲がり角を迎えた時期から後を振り返ります。(聞き手=日経クロステック 堀越功、高槻芳)

KDDI 5G・xRサービス戦略部エキスパートの砂原哲さん(左)とパーソナル企画統括本部プロダクト企画部企画1Gマネージャーの近藤隆行さん(右)
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KDDI 5G・xRサービス戦略部エキスパートの砂原哲さん(左)とパーソナル企画統括本部プロダクト企画部企画1Gマネージャーの近藤隆行さん(右)
砂原氏は映像プランナーなどを経て1998年に第二電電(現KDDI)に入社。2003年の「INFOBAR」を皮切りに70機種を超えるau Design project/iidaブランドの製品企画・プロデュースを手掛けた。最も思い入れが深い端末は初代「INFOBAR」とのこと。近藤氏は1991年に中国セルラー電話(現KDDI)入社。au初のカメラ付き携帯電話「A3012CA」(カシオ計算機製)を皮切りに、タフネスモデルのG'zOneシリーズや高画素カメラ搭載のEXILIMケータイなどを手掛ける。最も思い入れが深い端末は、実現まで4年をかけた初の折り畳みタフネスケータイ「G'zOne TYPE-R」(カシオ計算機製、2005年発売)。(写真:日経クロステック)

ものづくりも塗装も当時はケータイが最先端だった

日経クロステック堀越(以下、堀):総務省がいわゆる「分離プラン」を求めた2008年ごろから端末不況が始まりました。

砂原哲氏(以下、砂):このあたりからシンプルな端末が求められるようになりました。例えば「misora iida」(2009年発売)は不況のあおりを受けて作ったシンプルな端末です。

端末不況の影響が表れ始めたという2009年ごろのauケータイのラインアップ
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端末不況の影響が表れ始めたという2009年ごろのauケータイのラインアップ
(写真:日経クロステック)

堀:iidaはどのような位置付けで始まったのでしょうか?

砂:iidaは公式には、「innovation」「imagination」「design」「art」の頭文字を取ったものです。au Design projectをアップデートし、周辺機器などを含めてライフスタイルを提案していこうというコンセプトでした。

堀:iidaはau Design projectのセカンドラインのような印象を受けていました。au Design projectよりもインパクトは薄かったような……。

砂:実は今年がau Design projectが始まって20周年、来年(2023年)が「INFOBAR」が登場して20周年になります。

堀:先日のG'zOneの復活のように、au Design projectの復活も期待しちゃいますね。

砂:当時の端末を復活させるのにはお金がかかりますからね……。

近藤隆行氏(以下、近):ボタン搭載モデルはひそかにお金がかかります。

砂:あとは小型のディスプレーが手に入りにくい。

近:スマホサイズのディスプレーが主流になっているので、コンパクトサイズのディスプレーの調達が本当に難しくなっています。小さなディスプレーはクルマのドライブレコーダー用などくらいしかないんですよ。

砂:部品の調達に左右されてしまうので、昔の端末の復活は難しいんですよ。カスタムで作ったら、1台100万円くらいかかってしまいます……。

近:凝ったボタンでなければ作れますが、当時は押し心地などもデリケートに作っていました。ボタンのバックライトもきれいに光らせないといけない。普通の家電製品とは違い、かなりのギミックが入っていました。

砂:そもそもこれらのノウハウを持った技術者がいなくなってしまいました。

日経クロステック高槻(以下、高):ケータイは、日本式ものづくりの真骨頂でもあったと。

「第二の皮膚」を目指し触感もデザインした「MEDIA SKIN」(2007年発売)
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「第二の皮膚」を目指し触感もデザインした「MEDIA SKIN」(2007年発売)
ウレタン粒子を含んだソフトフィール塗料を採用し、触り心地にもこだわった(写真:日経クロステック)

砂:そうですね。当時はケータイが、塗装技術でも最先端でした。今は自動車が最先端ですけれども、当時は自動車産業がケータイを見習っていた時代です。例えば「MEDIA SKIN」(2007年発売)では、有機ELディスプレーを最初に採用し、塗装も触り心地がよいソフトフィール塗料を使いました。

近:MEDIA SKINは本当に気持ちがよい肌触りでした。