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 2022年8月、東京駅前に地上45階の高層複合ビル「東京ミッドタウン八重洲」が竣工する。ポストコロナ時代の最先端オフィスをうたうこのビルのオフィス棟では、感染症対策のために完全タッチレスの仕組みが導入される。顔認証によるオフィス入退館システムなどとともに採用されるのが、オフィスフロア各階のエレベーターホールに設置される空中タッチディスプレー、つまり空中ディスプレー技術を使った非接触の行き先階選択ボタンである。

2022年8月、東京駅前に竣工予定の「東京ミッドタウン八重洲」。オフィス棟には完全タッチレスの仕組みが導入され、その1つとして空中タッチディスプレーがエレベーターホールに設置される。
2022年8月、東京駅前に竣工予定の「東京ミッドタウン八重洲」。オフィス棟には完全タッチレスの仕組みが導入され、その1つとして空中タッチディスプレーがエレベーターホールに設置される。
(図:三井不動産)
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 東京ミッドタウン八重洲のオフィスフロアのエレベーターホールでは各階に2台ずつ、合計で70~80台の空中タッチディスプレー装置が導入されるという。こうした採用は、国内初とみられる。

東京ミッドタウン八重洲のオフィスフロア各階のエレベーターホールに設置される空中タッチディスプレー。凸版印刷が提供する。製品名は「La<sup>+</sup> touch(ラプラスタッチ)」。
東京ミッドタウン八重洲のオフィスフロア各階のエレベーターホールに設置される空中タッチディスプレー。凸版印刷が提供する。製品名は「La+ touch(ラプラスタッチ)」。
(写真:凸版印刷)
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 この空中タッチディスプレー装置を開発・提供するのが凸版印刷だ。最大の特徴が、内蔵する7インチの液晶ディスプレー(LCD)と平行に空中に結像させることで、厚さが電子回路基板を含めて60mmと、他社の多くの装置と比べて約50%薄型な点だ。この薄さが、今回採用に至った理由の1つである。

特許申請中の独自方式

 空中ディスプレー技術にはいくつかの方式がある。例えば、セブン-イレブン・ジャパンが22年2月から実証実験を行っているキャッシュレスセルフレジで採用するアスカネットの映像結像プレート「ASKA3D」では、プレートに対して45°の角度でLCDを配置し、プレートを軸に面対称の位置に空中映像を出現させる。また再帰反射材と呼ばれる映像結像プレートを使う別方式でも、LCDと平行に空中映像を出すことはできないので、装置はそれなりに厚くなる。

左はアスカネットの「ASKA3Dプレート」や、情報通信研究機構(NICT)発のベンチャーであるパリティ・イノベーションズが手掛ける「2面コーナーリフレクターアレー(DCRA)」を使った場合のシステム構成。右は凸版印刷の独自方式でのシステム構成。平行配置なので装置を薄型化できる。
左はアスカネットの「ASKA3Dプレート」や、情報通信研究機構(NICT)発のベンチャーであるパリティ・イノベーションズが手掛ける「2面コーナーリフレクターアレー(DCRA)」を使った場合のシステム構成。右は凸版印刷の独自方式でのシステム構成。平行配置なので装置を薄型化できる。
(図:凸版印刷)
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 一方、凸版印刷の開発品は、LCDと映像結像プレートを平行に配置し、空中映像が装置から数cmの位置に平行に結像する。同様の構成で装置と平行に空中映像を出現させる方式に、微小なレンズを多数並べた「マイクロレンズアレー(MLA)」と呼ばれる映像結像プレートを使うものもある。

 凸版印刷は技術の詳細について「特許申請中なので現在は公表できない。具体的には、MLAとは異なる独自方式を開発した。省スペースという点ではMLAのライバルになる」(エレクトロニクス事業本部オルタス事業部営業部営業企画チーム部長の岩野毅氏)としている。