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 これまでのApple Eventの中で最高のユーザー体験だった。「空間オーディオ」。この技術を使ってイベント動画の音声が配信されたのだ。イベント動画はアーカイブとして米Apple(アップル)のサイトで視聴できるので、AirPods Pro、AirPods Max、AirPods (第3世代)、あるいは Beats Fit Proといった空間オーディオ対応の同社製のイヤホンやヘッドホンと、空間オーディオに対応したmacOS、iOS、iPad OS搭載デバイスをお持ちの方は、それらを使用してイベント動画を視聴してみてほしい。

AirPods Maxでイベント動画を視聴する。丁寧に作り込まれたDolby Atmosコンテンツであり、Appleが空間オーディオに力を入れていることが伝わる
AirPods Maxでイベント動画を視聴する。丁寧に作り込まれたDolby Atmosコンテンツであり、Appleが空間オーディオに力を入れていることが伝わる
(筆者撮影)
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 Apple CEOのティム・クック氏をはじめ各プレゼンターが発する声に耳を傾けると、彼らが頭上に空間のある部屋で話していることが音像から感じ取れる。それは製品のプロモーションビデオ(PV)も同様だ。特に動画終盤のMac StudioとApple Studio DisplayのPVは圧巻だ。映画のようなゴージャスな映像表現に目を奪われてしまうが、Dolby Atmosを駆使した音響もすごい。

 ヘッドトラッキングにも対応しているので、顔の向きを振るとティム・クック氏の声の位置が移動する。筆者の場合、デスクの左斜め前にMacBook Proを置き、イベント動画を再生しながら、正面のiMacでこの原稿を書いているのだが、ティム・クック氏の声は左斜め前に置いたMacBook Proの画面の方向から聞こえてくる。

ヘッドホンで聴いた場合でも空間オーディオの威力で、ステレオとは異なる立体感のある音像を体験できる
ヘッドホンで聴いた場合でも空間オーディオの威力で、ステレオとは異なる立体感のある音像を体験できる
(出所:Apple)
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 試しに、通常のステレオ再生に切り替えると、ティム・クック氏の声は、頭蓋のど真ん中で鳴り響き、平板で退屈な音像に終止する。部屋の反響にしても、空間オーディオを体験した後では、取って付けたような初期反射に不自然さを感じてしまう。没入感が一気に減退し、ユーザー体験における満足度が下がる。

 終盤のMac StudioとApple Studio DisplayのPVもステレオにすると同様の印象になる。BGMのパーカッションは頭の中心で鳴り、左右に振り分けられたボーカルや楽器類は、両耳を結んだ線上に配置されるだけで、立体的に感じない。

MacBook Proのスピーカーでも立体的な音像を体験可能

 残念なのは、前述のApple製イヤホンを使った場合でも、空間オーディオを堪能できる端末が限定されている点だ。Appleが公開している資料「AirPodsやBeatsで空間オーディオを体験する」によると、基本的にiOS14およびiPadOS14以降が必要とある。ただ、OSのバージョンが「14」以降であっても、iPhoneは「7」以降、iPadは第6世代以降などとハードウエアに制限がある。試しに、筆者が所有するホームボタン付きの9.7インチ初代iPad Pro(iPad OS15)で試してみたところ、空間オーディオにはならなかった。

MacBook Pro 2021であれば、内蔵のスピーカーで空間オーディオが楽しめる。向こう側にあるIntel MacBook Pro 2020は非対応
MacBook Pro 2021であれば、内蔵のスピーカーで空間オーディオが楽しめる。向こう側にあるIntel MacBook Pro 2020は非対応
(筆者撮影)
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 Macに目を向けると、MacBook Proに至っては2021モデルに限定されている。幸い筆者は14インチのM1 MacBook Pro 2021を所有しており、これで試したところApple製のイヤホンでの再生はもちろんのこと、スピーカーによる再生においても空間オーディオに対応しているのがすぐに知覚できる。その音空間を言語で表現すると、MacBook Proの両端のスピーカー位置が外側に各30センチ程度広がったような印象だ。頭の後ろまで音で包み込まれるような独特の埋没感を得ることができる。

 ちなみに、Intel MacBook Pro 2020による再生では、Appleの説明通り空間オーディオでの再生には非対応だった。これは、Apple TV+の映像コンテンツも同様で、Intel MacBook Pro 2020だと通常のステレオ再生だが、M1 MacBook Pro 2021であれば空間オーディオを楽しめる。

空間オーディオに対応したApple製のイヤホンであれば、メニューバーに表示した「サウンド」設定から空間オーディオのオン/オフ切り替えが可能
空間オーディオに対応したApple製のイヤホンであれば、メニューバーに表示した「サウンド」設定から空間オーディオのオン/オフ切り替えが可能
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