転職活動を始めると、面接で前職を辞めた理由を聞かれることがあります。「新しくやりたい仕事ができた」など前向きな理由ならよいのですが、「人間関係に問題があった」といった理由だと、初対面の面接官には説明しにくく、不安になる人もいるでしょう。
しかし、人材派遣会社の営業職として10年ほど働いた筆者の経験からすると、退職の理由が必ずしも前向きでなくても、面接で「この人ならきっと大丈夫」と信頼できそうならマイナス評価になることはありません。では、どのように退職理由を伝えれば採用側にも納得感があるのでしょう。
例えば頻繁に耳にする退職理由として、「前職の上司との間に問題があって退職した」「アサインされる仕事の難度が高く、仕事量も著しく多く苦労した」などが挙げられます。面接でこうした経験について尋ねられた場合、よくある説明は以下の2通りです。
前職の上司が本当に嫌な人で、私にだけ面倒な仕事を押し付けてきたり、仕事も説明なしに丸投げしてきたり、とにかく大変だったんです。こんな人の下では長く働けないと思い、退職を決意しました。
前職では仕事量が多く、自分の対応力では長く続けていけないと判断して退職しました。ある程度の裁量も与えられていて自分で考えて進めなければいけない点は大変だったのですが、他の人ができない領域を任せてもらえて自分の成長にもつながったと思います。もし何か問題があったときには、独りで抱え込まず、早め早めに周りに相談する大切さを学びました。
職場で起こった出来事はほぼ同じだとしても、受ける印象はだいぶ違うことが分かります。
Aさんは前職で苦労した事実を述べていますが、退職理由の説明が元の上司への不満に終始しています。自分の退職を「他人のせい」にしており、そこからAさん自身が何を感じ、学んだのかは伝わってきません。
一方、Bさんの説明からは職場の状況を主体的に分析し、つらい状況でも学びを得た本人の姿勢が分かります。話を聞く人の多くは、仕事内容を「自分事」として捉えているBさんのほうに安心感や信頼感を抱くのではないでしょうか。このように、同じ退職理由でも説明によって面接官への伝わり方は大きく変わるのです。
面接では信頼感の醸成が大切
筆者も派遣先にスタッフを推薦する前には、前職の退職理由を確認していました。とはいえ派遣スタッフには派遣会社に退職理由を伝える義務はありませんし、筆者も派遣先に退職理由をそのまま伝えるつもりで聞いていたわけではありません。先述のように「この人なら次の職場でもしっかり仕事をしてくれそう」という信頼感が得られるかを確認するための質問でした。これは人材派遣の営業職だけでなく、企業の採用担当者にも共通する考えだと思います。
ではどのような点に気を付ければ、信頼感を持ってもらえるのでしょう。筆者が退職理由を聞く際に注視していたポイントは次の2点です。