全2742文字
PR

 今はフルタイムで仕事に全力投球している人でも、体調不良、子育て、介護など、ライフステージによって働き方は変わる可能性があります。人材派遣の営業職として10年ほど働いた筆者は、さまざまなワークスタイルの派遣スタッフと接してきました。「派遣」という働き方の特性上、時短勤務、週3~4日勤務、在宅勤務など柔軟な働き方を希望する人が多いのです。

 フルタイム以外の働き方で成果を上げるには、個人側と企業側の両方にちょっとした配慮が必要です。こうしたワークライフバランス重視の働き方を受け入れることは、実は個人だけでなく企業にもメリットがあります。

家庭の事情などで週5日のフルタイム勤務が難しくなった従業員。柔軟な働き方を認めたほうが企業にもメリットが
家庭の事情などで週5日のフルタイム勤務が難しくなった従業員。柔軟な働き方を認めたほうが企業にもメリットが
[画像のクリックで拡大表示]

 今回は筆者が今まで出会った派遣スタッフと勤務先の企業の例から、ワークライフバランス重視の上手な働き方を見ていきましょう。

同僚が不平等感を抱かない、少しの気遣いが重要

 家庭の事情などで勤務に影響が出る場合、一緒に働く人に不平等感を抱かせない配慮が重要です。「自分がいなくても無理なく仕事が回るよう、平常時からマニュアルや引き継ぎ事項を整理しておく」「欠勤や遅刻の際は早めに連絡を入れる」といった、基本的なところから気を付けるとよいでしょう。

 これができていないと、職場の同僚間で不満がたまり、仕事に支障が出てしまうことがあります。筆者が目にしたケースでは、次のような例がありました。いずれも1人で就学前の子どもの世話をするため、時短勤務をしている派遣スタッフです。

派遣スタッフAさんの場合
勤務態度が熱心で、仕事も速く、派遣先の上司や同僚からの評判も上々でした。子どもの事情で急な早退や欠勤も多かったのですが、事前に連絡を欠かさず、引き継ぎの情報共有も十分で、周囲とうまくコミュニケーションできていたため問題にはなりませんでした。周りからのフォローもあって、円滑に業務をこなせていました。
派遣スタッフBさんの場合
毎日、子どもを保育園に送ってから出社するのですが、「たびたび連絡なしで遅刻する」「子どもの事情で急に休んだ際に仕事の引き継ぎが不十分で、他の派遣スタッフに負担がかかる」など、社内でのコミュニケーションに不備がありました。その一方、子育て中の社員や派遣スタッフと勤務時間内に話し込んでしまうこともしばしば。そんなBさんの様子を見て不満を感じた他の派遣スタッフから、「周囲への配慮が足りない」と派遣会社への相談が頻繁にありました。派遣会社から何度か注意があったものの、Bさんは「バタバタしていて連絡できなかった」といって改善されませんでした。次第に同僚からの風当たりが強くなり、Bさんは契約終了を余儀なくされてしまいました。

 Aさん、Bさんどちらも家庭の事情で急な遅刻・欠勤・早退がある点は共通ですが、職場から信頼されていたかどうかが大きな違いといえそうです。この連載で以前にも、職場で日ごろの信頼関係を築くことの重要性を紹介したことがあります。日常的に適切な報告や相談をしている、他人の業務の遅れ・急ぎの案件などを手助けしているといった、いわゆる「信頼貯金」です。

関連記事: 自分の意見が会社に理解される人・されない人、違いはどこにあるのか

 十分な信頼貯金があれば突発的に勤務に影響する出来事が起こった際も、周囲は「フォローしよう」と前向きな気持ちになれます。ところが先ほどのBさんのように、ワークライフバランスで「ライフ」側に比重が偏り過ぎて「ワーク」への配慮が足りなくなると、いざというときに同僚からの助けが得にくくなってしまうのです。

 ワークライフバランス重視の職場を実現するためには、働く個人だけでなく企業側にも配慮が必要です。これは企業側にもメリットがあります。