職場での働きやすさは人間関係、特に上司がどんな人かに大きく左右されます。人材派遣会社の営業職として10年ほど働いた筆者が、派遣スタッフから一番多く受けていたのも「上司についての相談」です。
「上司が自分の仕事内容を全く把握していない」「上司に仕事の相談をしても対応してくれない」「上司から無理な依頼をされて困っている」とさまざまな、数え切れないほどの相談を受けてきました。上司の人柄は職場への影響が大きく、異動によって全体の雰囲気や方針がガラッと変わってしまうケースも少なくありません。
派遣スタッフに好かれ、職場に良い影響をもたらす上司もいれば、その逆もあります。両者の違いはどこにあるのでしょう。
部長の異動で離職するスタッフが急増
例えばとある派遣先のX社では、同じ部署に筆者が担当する複数の派遣スタッフが在籍していました。派遣スタッフたちの直属の上司であるA部長には、部下たちから絶大な信頼が寄せられていました。筆者と派遣スタッフとの定期面談の際には「A部長の下で働けて本当に良かったです」「こんな良い職場を紹介してくれてありがとうございます!」といった声が上がるほどでした。
ところがあるとき、A部長が他部署へと異動しました。新たに就任したB部長の体制がスタートすると、所属していた派遣スタッフから「次の契約更新はせず辞めようと考えている」という相談が相次いだのです。
詳しく話を聞くと、「B部長は残業しないでほしいという割に、A部長時代より多くの業務を依頼してきます」「派遣スタッフの業務内容を理解していないから、私たちが単純な仕事しかしていないと思っているみたいで」「指示が曖昧なのに、少しミスをすると一方的にこちらが悪いと言われて……なんだか疲れてしまいました」といった不満が次々と出てきました。
A部長の頃は生き生きと働いていた派遣スタッフも、打って変わって面談時に愚痴をこぼすようになってしまったのです。実際に契約更新のタイミングでX社を辞める派遣スタッフも増えました。「上司が替わった途端に離職率が上がる」、これは派遣会社の営業がしばしば目にする事象です。
A部長とB部長、一体どこが違うのでしょう。筆者が担当していた派遣先で「離職率が著しく低い部署」と「離職率が高い部署」を比べると、いくつかポイントが見つかります。