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 新しい環境で仕事を始めた際、「なんだか職場が合わない」と悩む人は少なくありません。人材派遣会社の営業職として10年ほど働いた筆者は、派遣スタッフからこうした相談を多数受けてきました。

 そこから見えてきたのは「職場が合わない」とよく相談してくる派遣スタッフは、どこに派遣しても同じように悩んでしまいがちなことです。こうした人は、一つの職場で長く勤めるのも難しい傾向があります。

 「職場が合わない」と感じやすい傾向と、能力とは必ずしも関係ありません。反対にどの派遣先でも安定して働いているタイプの人と比べると、むしろその人の考え方、職場環境の捉え方の違いによって、目の前の仕事に対する不満のたまりやすさが異なるようです。

職場に不満を抱きやすい人とそうでない人はどこが違う?
職場に不満を抱きやすい人とそうでない人はどこが違う?
(出所:日経クロステック)
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 言い換えれば、環境に対する捉え方を少し変えてみることで不満が和らぎ、仕事がしやすくなる可能性があります。ほとんどの人にとって、仕事には「生活」がかかっているものです。心身に影響が出るほどストレスがたまっている場合や当面のお金に困っていない場合は別として、職場が合わないからといってすぐに辞めるわけにはいかないケースが多いでしょう。いずれ近いうちに職場を去るつもりだとしても、一時的に現状をやり過ごすための考え方を知っておくのは無駄にはなりません。

 例えば、同時期に同じ派遣先の同部署にいた派遣スタッフ、AさんとBさんのケースを見てみましょう。2人は同職種・同業務で、同じ上司の下で働いていました。この職場では上司が日々の業務に追われ、派遣スタッフのフォローにまで手が回っていませんでした。派遣スタッフの業務内容や、個々のスタッフの業務量も把握しきれていなかったのです。残業が長くなったり、レクチャーが不十分な業務をアサインされた人が混乱したりといった問題が頻繁に起こっていました。

 ところが筆者と定期面談をした際、2人の派遣スタッフのコメントは大きく異なっていました。

●派遣スタッフAさんの話
依頼された業務の意味がよく分からないので部長に確認しても、定時過ぎになってようやくメールの返事が来る状況です。昨日も部長のせいで2時間も残業になりました。人の時間を何だと思っているんでしょうか……。自分の仕事のことしか見えていないんだと思います。こんな働き方は希望していないのですぐにでも辞めたいです。
●派遣スタッフBさんの話
部長は忙しいのでメールの返信などは遅いです。そのため、派遣スタッフ側でできる範囲の業務をまずは片付けておいて、定時になっても返信がない場合は副部長に相談しています。いろいろ問題はありますが、部長も悪い人ではなくて、話す機会があるときはねぎらいの言葉をかけてくれますし……。本当に忙しそうなので、こちらも可能な限り負担をかけないようにしています。今はとりあえず大丈夫です。

 そもそも、この職場の環境や管理職としての部長の動き方に問題があるのは明らかです。そのため、Aさんの意見も間違ってはいません。とはいえ、環境が好転するには「部長の異動」「部長並びに部署全体の業務整理・業務効率の改善」などが必要で、いずれもすぐに実現するとは限らない状況です。そんな中で、Bさんのように冷静に仕事を進めるにはどんな考え方をすればいいのでしょう。