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住民に寄り添う行政サービスの実現に向け、自治体が取り組むのがデータ連携と活用だ。個人にとって必要な行政サービスをプッシュ通知するなどして、住民の利便性を高める。都道府県が市町村向けにデータ連携基盤を提供する取り組みも始まった。

千葉市
使えるサービスをLINEでプッシュ通知

 「あなたは児童扶養手当を受給できる可能性があります」──。千葉市は市が保有する住民データを連携することで、住民やその家族が利用できる行政サービスをスマートフォンでプッシュ通知するサービスを2021年1月に導入した。市の住民データを連携し、かつプッシュ通知するサービスは全国で初めてだ。2022年度からは通知対象の制度を拡充する計画だ。

 住民税情報などを活用し、利用者の状況に応じて利用できる制度を対話アプリ「LINE」でプッシュ通知する。複雑な行政サービスの中から、自身が対象となっている制度をプッシュ通知で把握できれば、制度の「使い忘れ」を防ぐことができるようになる。

千葉市の「あなたが使える制度お知らせサービス」の仕組み。個人が利用できる行政サービスをLINEでプッシュ通知する
千葉市の「あなたが使える制度お知らせサービス」の仕組み。個人が利用できる行政サービスをLINEでプッシュ通知する
(出所:千葉市の資料を基に日経クロステック作成、画像提供:千葉市)
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 LINEで千葉市公式LINEアカウントを友達に追加した上で氏名や生年月日などを入力し、利用申請をする。千葉市はその情報を市の住民情報系システム内の個人データと突き合わせたうえで、住民情報とLINEアカウントをひもづけるための登録番号を郵送で利用者に送る。利用者は登録番号を千葉市公式LINEアカウントに入力し登録して初めてサービスを利用できるようになる。制度の対象となる住民をあらかじめ登録した条件に沿ってシステムが自動的に住民情報から対象者を抽出し、通知する仕組みだ。

個人情報の取り扱いに課題も

 導入から1年たち、効果も出ている。例えばプッシュ通知があったことで胃がんリスク検査の申込者が増えたほか、同制度への問い合わせも増えた。

 ただ課題も見えてきた。1つは利用者の伸び悩みだ。開始から1年で利用者数は目標の半数にとどまる。

 個人情報への配慮と利便性の兼ね合いも課題として浮かび上がった。当初懸念していたのが、庁内組織の壁を越えて住民データをLINEアプリと連携する際の個人情報保護だ。とりわけ税に関する情報の管理は厳格だ。

 そこで千葉市はまず個人情報の運用ルールを整理。住民がサービスを利用登録する際にひとつひとつ住民から同意を取得するようにした。具体的には、利用者は自身の税関連情報の利用に同意した上で、対象制度の中から通知が欲しいものをチェックする。

 運用を始めたところ、「登録時点で自身が制度の対象でないもののチェックを外す傾向があった」(担当者)。当初は所得状況が変わったり出産したりと自身が制度の対象になった際に、利用できる制度を通知してほしいと希望する利用者が多いと想定していたが、それが難しいということになる。

 住民データの連携による個別化した制度のプッシュ通知は、他の自治体でも住民の利便性につながると期待が高い。プッシュ通知する制度や通知の方法、同意取得の方法など模索が続きそうだ。