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 軽量材料として利用が広がっている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)。そのCFRPのポテンシャルを最大限引き出す技術を豊田中央研究所(愛知県長久手市)が開発した。シミュレーションを活用して炭素繊維の配向(繊維の向き)と部品形状を同時に最適化する「異方性トポロジー最適化技術」と、最適化した配向・形状のCFRPを製造する技術で構成される1)

 トポロジー最適化とは、設計空間内の材料配置を提案するシミュレーション手法。例えば、製品の3次元モデルに荷重条件や拘束条件を設定すると、強度を確保しつつ不要な部分を削って軽量化した形状案を示してくれる。手法そのものは30年以上前から知られているが、従来は金属をはじめとする等方性材料を設計対象として選ぶ場合が多かった。今回は形状に加えて強化繊維の配向も同時に最適化する点が新しい。同社は新技術の適用例として、自動車のリアウイングを支える「リアウイングピラー」などを試作している(図1)。

図1 リアウイングピラーの試作品
図1 リアウイングピラーの試作品
異方性トポロジー最適化で設計したCFRP製のリアウイングピラー(a)とリアウイングの例(b)。(出所:aは日経ものづくり、bは日本自動車技術会)
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CFRPの異方性を考慮して最適化

 CFRPは、アルミニウム合金やチタン合金といった金属材料と比べて、質量あたりの剛性や強度に優れている。製品の構造材として使えれば、高剛性と軽量化の両立を図れる。ただし、CFRPは炭素繊維の向きで特性が変わる異方性材料である。荷重方向と異なる向きに炭素繊維を配置してしまうと、その方向での剛性は低下してしまう。

 CFRPの異方性を補って等方性材料に近づける手法もある。例えば連続繊維を使うCFRPでは、さまざまな方向となるように炭素繊維を編み込んで使用する。ただ、こうした「準等方性」のCFRPは、理想的な単軸配向*2のCFRPと比べて、密度当たりの弾性率が半分以下とされる。

*2 単軸配向
ある一方向だけに着目して材料の配置に偏りを持たせること。ここでは炭素繊維の束をそのまま使うことを意味する。

 そこで豊田中研は2015年ごろから、材料の異方性を考慮したトポロジー最適化に関する技術開発を進めてきた。単軸配向のCFRPを利用しつつ、軽量化された部品の形状を自動で提示する仕組みである。従来、部品形状の最適化と強化繊維の配向の最適化を同時に検討するのは難しかった。形状と配向の両方を最適化できれば、単軸配向のCFRPであっても異方性は弱点になりにくい。