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 JFEスチールは、自動車の車体の一部を対象としたトポロジー最適化を、車体全体のシミュレーションと関連付ける独自の「JFEトポロジー最適化技術」を開発した。車体全体のシミュレーション結果(車体の構造にかかる荷重の複雑な変化)を考慮することで、トポロジー最適化の精度を高められる。

 同技術は部品形状のトポロジー最適化だけでなく、車体をスポット溶接する位置の最適化にも適用可能だ(図1)。すでに販売されている自動車の開発で活用されており、例えばスズキの「スイフトスポーツ」のフロントダッシュサイドパネルで部品形状最適化が採用されたと、2019年1月に発表している(図2*1

図1 「JFEトポロジー最適化技術」の適用例
図1 「JFEトポロジー最適化技術」の適用例
衝突安全性の要件を満たす部品形状の最適化を実現する「部品形状最適化」(左)と車体剛性を効率的に向上させる接合位置を高い精度で特定する「接合位置最適化」(右)。(出所:JFEスチール)
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図2 スズキ「スイフトスポーツ」
図2 スズキ「スイフトスポーツ」
(出所:スズキ)
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*1 JFEスチールは部品形状最適化の適用事例を2019年1月に、接合位置最適化の適用事例を17年12月に発表している。

設計空間を車体に取り込む部品形状最適化

 まずは部品形状のトポロジー最適化について、自動車のフロント部の構造を例に説明しよう。このシミュレーションでは、固有値(固有振動数)*2を最大化できる軽量な構造(追加部品の形状)を見つけるのが目的だ。

*2 固有値
構造物が持つ固有の共振周波数。

 自動車のフロント部にはバンパービームやラジエーターサポートなど重い部品が多数取り付けられているため、ハンドルを切ったときに左右へ動く(図3)。この動きによる操舵(そうだ)遅れの発生リスクを最小化する方法の1つが、通常の運転での共振を避けられるよう、フロント部の構造を工夫して固有値を大きくすることだ。

図3 フロント部が左右に動くイメージ
図3 フロント部が左右に動くイメージ
バンパービームやラジエーターサポートなどの質量によってフロント部のみが左右に動いて、操舵遅れを発生させるリスクがある。(出所:JFEスチール)
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 JFEトポロジー最適化技術では、設計空間をフロント部のエンジンルームとし、それを車体全体の解析モデルに組み込んだ(図4)。設計空間の設定では、エンジンなどとの干渉を避けつつ、取り付け位置などにも配慮している。JFEスチール スチール研究所薄板加工技術研究部主任研究員の斉藤孝信氏は、「車体にトポロジー最適化の設計空間を組み込んで解析したのは当社が初めて」と胸を張る。

図4 車体に組み込んだ設計空間
図4 車体に組み込んだ設計空間
トポロジー最適化を適用する設計空間を、車体全体の解析モデルに組み込む。 (出所:JFEスチール)
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 トポロジー最適化では、初期形状から体積が20%以下になることを制約条件に、固有値が最大となるようにした。肉抜きしていった各段階の形状での固有値を、車体全体のシミュレーション結果を考慮して計算していく。